園芸学研究
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収穫後の貯蔵・流通
ウメ‘南高’果実の着果位置の違いが梅酒加工品の品質に及ぼす影響
大江 孝明櫻井 直樹山崎 哲弘奥井 弥生石原 紀恵岡室 美絵子中西 慶土田 靖久細平 正人
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2012 年 11 巻 3 号 p. 371-378

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抄録

ウメ‘南高’果実の着果位置の違いが梅酒加工品の品質に及ぼす影響について,4年間調査した.梅酒中のクエン酸およびソルビトール含量は,原料果実の収穫時期が遅いほど多くなる傾向を示し,樹冠内層および樹冠外層の青果収穫開始期に収穫した果実を用いた梅酒で比較すると,差はなかった.一方,ポリフェノール含量および抗酸化能は,樹冠内層の果実では,原料果実の収穫時期が遅いほど多くなる傾向を示し,樹冠内層および樹冠外層の青果収穫開始期に収穫した果実を用いた梅酒で比較すると,内層の果実を用いた梅酒で優れる傾向であった.苦みを示すプルナシンと青っぽい香気成分の安息香酸エチルの含量は,原料果実の収穫時期が遅いほど少なくなる傾向を示し,樹冠内層および樹冠外層の青果収穫開始期に収穫した果実を用いた梅酒で比較すると,差はなかった.γ-デカラクトン,δ-デカラクトンおよび酪酸エチルといった芳香香気成分は,黄熟期では内層の果実を用いた梅酒で少ない傾向であった.これらの結果は,内層果実の収穫時期を7日程度遅らせることが,製造された梅酒のいくつかの機能性成分や苦み成分を外層の果実を用いた梅酒と同等にし,ポリフェノール含量および抗酸化能を向上させることを示し,黄熟期の果実を用いてフルーティーな梅酒を作る場合では,樹冠内層の果実を用いた場合は芳香香気が少ない梅酒となることを示している.

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© 2012 園芸学会
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