2012 年 11 巻 4 号 p. 459-465
黒色ポリエチレン製ポットを用いた夏季高温期のトマト育苗において,根域冷却を行う時間帯が苗の生育・活着および果実収量に及ぼす影響について検討した.根域冷却はポットの脇に設置した塩化ビニール製パイプ内に15℃の冷却水を循環することで行った.終日冷却では,無処理に比べて根の生育が促進されるのみの効果にとどまったが,昼間(7:00~19:00)のみの冷却によって,無処理よりも根に加えて地上部の生育が促進され,終日冷却以上に生育促進効果が高かった.一方,夜間(19:00~7:00)のみの冷却は,地上部の生育を抑制した.また,根域冷却によって根の生育が促進されることで活着が良くなることが分かった.さらに,育苗期の昼間の冷却によって果実収量が増加することが明らかとなった.昼間でも特に根域温度が上昇する時間帯(9:00~17:00)のみの冷却でも7:00~19:00の冷却とほぼ同等の効果が得られた.これらの結果から,本実験の環境条件下におけるトマトのポット育苗において,9:00~17:00の8 hのみ平均で3~4℃程度培地中央部の根域を冷却することで生育が促進され,低段密植栽培における果実収量も増加することが明らかとなった.