本試験では,高い芳香成分を有する梅酒製造のためのウメ‘南高’果実の熟度指標を見いだそうとした.梅酒中の総デカラクトン(γ-デカラクトンとδ-デカラクトンの合計),酪酸エチルおよび酢酸ブチルの各芳香成分含量とも,原料果実の果皮色b*値および果実硬度との間には強い相関関係が認められた.原料果実の果皮色b*値が34.5未満の梅酒は,各芳香成分含量が2008年は50 μg・L−1未満,2009年は100 μg・L−1未満であった.原料果実の硬度が0.98 kgより大きい梅酒は,1試料を除き,各芳香成分含量が2008年は50 μg・L−1未満,2009年は100 μg・L−1未満であった.果皮色b*値が34.5以上かつ果実硬度が0.98 kg以下の果実で調製した梅酒は,それ以外の果実で調製したものに比べて,総デカラクトン,酪酸エチルおよび酢酸ブチル含量が有意に多かった.20℃で6日以内の期間追熟した果実を用いた梅酒についても,原料果実の果皮色b*値および果実硬度は梅酒中の各芳香成分含量との間に強い相関関係が認められた.以上のことから,‘南高’果実を用いて製造した梅酒の芳香成分含量の指標として,果皮色b*値および果実硬度が利用できることが明らかとなった.