オリエンタル系ユリを高温期に栽培すると草丈が短くなり,また,がく割れの増加などにより生育が劣る.そこで,西南暖地の8月に‘シベリア’を定植してヒートポンプエアコンを用いて夜冷栽培を実施した.その結果,夜温を下げると昼温,地温も低下し,夜温22℃,19℃設定で管理すると,夜温が25℃以上となった無処理区より採花期がやや早まり,草丈が長くなり,がく割れが減少した.また,8月上旬の定植後3~4週間までの夜冷により,採花時まで夜冷した場合と同等に草丈が伸長した.定植4週間後のりん茎の乾物重には夜温による差はないが,茎,葉,花蕾および茎出根の乾物重は低夜温下での栽培で大きく,特に茎出根の乾物重で差が大きかった.これらのことから,低夜温での生育促進は,高温による茎出根の伸長抑制が緩和されて,養水分の吸収が良好になったためであると考えられた.