2012 年 11 巻 4 号 p. 561-567
ニホングリ果実の発育過程を早生品種の‘丹沢’と中生品種の‘筑波’を用いて中軸維管束の発達並びに子葉中のデンプン含量の推移から検討した.両品種とも子葉の成長(新鮮重)は,7月下旬からほぼ直線的に増加した.この増加曲線と子葉中のデンプン蓄積は密接に関連していた.デンプン含量の最大値は早生品種の‘丹沢’が中生品種の‘筑波’より約1か月早くに見られ,‘丹沢’では8月中旬,‘筑波’では9月中旬に最大値に達した.デンプン蓄積は子葉の発育当初から見られ,細胞内の周辺部から内部へ蓄積していった.子葉への養分の転流経路は中軸維管束から種皮に走向する通道組織であることを確認した.これらのことから,クリ果実の子葉への炭水化物の転流やデンプン蓄積には,果実発育初期からの樹体管理が特に重要であると考えられた.