園芸学研究
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育種・遺伝資源
我が国自生スノキ属野生種クロマメノキとハイブッシュブルーベリー‘ブルークロップ’との節間交雑から得られたF1系統の評価
執行 みさと具志堅 文桂川 明広臂 光昭吉岡 克則鹿毛 哲郎國武 久登小松 春喜
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2014 年 13 巻 2 号 p. 97-106

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抄録
我が国の環境に適し,果実の品質,機能性ともに高い品種の育成を目的として,我が国に自生する野生種のクロマメノキ(Vaccinium uliginosum L. section Vaccinium)(2n = 6x = 72)とハイブッシュブルーベリー(V. corymbosum L. section Cyanococcus)(2n = 4x = 48)数品種との正逆交雑を行い,節間交雑の可能性を検討した.その結果,クロマメノキを種子親とした場合には,9交配組合せから8交配組合せで完全種子が得られ,5交配組合せで計13個体の実生が得られた.それに対し,花粉親とした場合には,計7個体の実生が得られたものの,完全種子が得られたのが9交配組合せ中2交配組合せのみであった.このようにクロマメノキとHB品種間では一側交雑不和合性が認められ,クロマメノキを種子親とした場合に,比較的容易に種子が得られることが明らかとなった.これらの種子は,ジベレリンで前処理後培養,または層積後播種することで発芽した.これらの中から,クロマメノキと‘ブルークロップ’との交雑から得られた4個体の交雑実生(KB4系統:KB-2,7,9および10)を接木し,雑種性,倍数性,花や果実の形態的特徴および果実品質を評価した.RAPD分析により,KB4系統はいずれもVaccinium節とCyanococcus節との節間雑種であることが確認された.また,フローサイトメトリーおよび新梢先端組織の細胞の染色体数を観察することにより,KB4系統が五倍体であることが明らかになったが,いずれの系統でも稔性花粉が生産されており,オープン条件下で着果が見られた.それらの果実は,両親とは異なり,果柄に1対の小葉を有しており,果実のアントシアニンおよびポリフェノール含量と抗酸化活性は系統間で異なったが,KB-2のそれらの値は‘ブルークロップ’より有意に高かった.これらの雑種は,高品質と高機能性を有する新品種を育成するための有用な育種材料になり得ると思われる.
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© 2014 園芸学会
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