園芸学研究
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13 巻, 2 号
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原著論文
育種・遺伝資源
  • 立澤 文見, 奥山 成美, 加藤 一幾, 庄野 浩資, 武田 純一, 小藤田 久義
    2014 年13 巻2 号 p. 85-89
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/30
    ジャーナル フリー
    ストック‘ビンテージホワイト’からシナポイルグルコシドおよび2種類のケンフェロール配糖体が主要成分として単離され,それらは化学およびスペクトル分析により1-O-(trans-sinapoyl)-β-glucopyranoside,kaempferol 3-O-(2-O-α-rhamnopyranosyl)-β-glucopyranoside-7-O-α-rhamnopyranoside,そして,kaempferol 3-O-(2-O-α-rhamnopyranosyl)-β-arabinopyranoside-7-O-α-rhamnopyranosideと同定された.‘ビンテージホワイト’から得られたこれら3つのフェノール化合物はビンテージシリーズの他の有色の8品種でも主要成分であった.これらのうち,1-O-(trans-sinapoyl)-β-glucopyranosideは,Arabidopsisにおいてシナピル化アントシアニン合成のための重要なアシル基供与体であることが知られている.さらに,有色のストックビンテージシリーズにおいて,シナピル化アントシアニンの比率が高いほど分子内コピグメンテーションによる花色の青色化が強いことから,1-O-(trans-sinapoyl)-β-glucopyranosideは,分子内コピグメンテーションによって引き起こされるストック花色の青色化において,重要な役割を果たしていることが推察された.
  • 古賀 武, 下村 克己, 末吉 孝行, 三井 寿一, 浜地 勇次
    2014 年13 巻2 号 p. 91-95
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/30
    ジャーナル フリー
    近紫外線除去(UVA)フィルム被覆下でも果皮の着色が優れる単為結果性ナス品種育成の可能性を判断する目的で,へた下の着色が濃い半数体倍加(DH)系統(濃系統),へた下の着色が淡いDH系統(淡系統)およびこれらのF1を供試して,へた下の着色程度とUVAフィルム被覆下における果皮色との関係について検討した.一般農業用ビニルフィルム被覆下(農ビ区)とUVAフィルム被覆下(UVA区)における果皮色の色差値は,濃系統の方が淡系統より有意に小さかった.また,濃系統を両親としたF1系統では,淡系統を片親あるいは両親としたF1系統より,農ビ区とUVA区間における果皮色の色差値が有意に小さかった.このことから,へた下の着色程度とUVAフィルム被覆下における果皮色には遺伝的な関連が認められ,UVAフィルム被覆下でも果皮の着色が低下しにくい単為結果性ナス品種育成の可能性が示唆された.また,果皮色の選抜に当たっては,一般農業用ビニル被覆下におけるへた下の着色程度を指標とすることによって,UVAフィルム被覆下でも果皮の着色が優れる系統を選抜できるものと考えられた.
  • 執行 みさと, 具志堅 文, 桂川 明広, 臂 光昭, 吉岡 克則, 鹿毛 哲郎, 國武 久登, 小松 春喜
    2014 年13 巻2 号 p. 97-106
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/30
    ジャーナル フリー
    我が国の環境に適し,果実の品質,機能性ともに高い品種の育成を目的として,我が国に自生する野生種のクロマメノキ(Vaccinium uliginosum L. section Vaccinium)(2n = 6x = 72)とハイブッシュブルーベリー(V. corymbosum L. section Cyanococcus)(2n = 4x = 48)数品種との正逆交雑を行い,節間交雑の可能性を検討した.その結果,クロマメノキを種子親とした場合には,9交配組合せから8交配組合せで完全種子が得られ,5交配組合せで計13個体の実生が得られた.それに対し,花粉親とした場合には,計7個体の実生が得られたものの,完全種子が得られたのが9交配組合せ中2交配組合せのみであった.このようにクロマメノキとHB品種間では一側交雑不和合性が認められ,クロマメノキを種子親とした場合に,比較的容易に種子が得られることが明らかとなった.これらの種子は,ジベレリンで前処理後培養,または層積後播種することで発芽した.これらの中から,クロマメノキと‘ブルークロップ’との交雑から得られた4個体の交雑実生(KB4系統:KB-2,7,9および10)を接木し,雑種性,倍数性,花や果実の形態的特徴および果実品質を評価した.RAPD分析により,KB4系統はいずれもVaccinium節とCyanococcus節との節間雑種であることが確認された.また,フローサイトメトリーおよび新梢先端組織の細胞の染色体数を観察することにより,KB4系統が五倍体であることが明らかになったが,いずれの系統でも稔性花粉が生産されており,オープン条件下で着果が見られた.それらの果実は,両親とは異なり,果柄に1対の小葉を有しており,果実のアントシアニンおよびポリフェノール含量と抗酸化活性は系統間で異なったが,KB-2のそれらの値は‘ブルークロップ’より有意に高かった.これらの雑種は,高品質と高機能性を有する新品種を育成するための有用な育種材料になり得ると思われる.
  • 仲條 誉志幸, 大林 沙泳子, 八幡 昌紀, 永嶋 友香, 成瀬 博規, 増田 幸直, 向井 啓雄, 原田 久, 高木 敏彦
    2014 年13 巻2 号 p. 107-111
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/30
    ジャーナル フリー
    三倍体ニホンスモモ‘貴陽’の結実不良を解明するために,落果調査と胚珠の内部形態観察を行った.‘貴陽’は‘太陽’より早期落果が激しく,受粉42日後の落果率は‘太陽’が77.8%であるのに対し,‘貴陽’では88.0%であった.開花期における‘貴陽’の胚のうの60%以上が未分化であった.未分化以外の胚のうでは,‘貴陽’は‘太陽’と同様の発達過程を経たものの,発達遅延や退化したものが‘太陽’より多く観察された.受粉14日後以降では,‘貴陽’の胚と胚乳発育は,‘太陽’と比べ,発達遅延が認められ,それ以外にも接合子や胚乳核がない異常なものも観察された.受粉35日後の前胚と胚乳核の観察された胚珠は‘太陽’が91.7%であるのに対し,‘貴陽’は75.0%であった.また,落下果実の胚珠は,‘太陽’では胚のうの未分化によるものがほとんどであったのに対し,‘貴陽’ではそれに加えて胚のうの発達遅延や退化,接合子や胚乳核の未分裂が認められた.
繁殖・育苗
  • 中村 薫, 永友 佑樹, 郡司 定雄
    2014 年13 巻2 号 p. 113-117
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/30
    ジャーナル フリー
    挿し芽による増殖が行われていないラナンキュラスにおいて,挿し芽増殖の可能性と,挿し芽期間の温度が挿し芽の成長および発根苗の定植後の生育開花に及ぼす影響を調べるため,10,15および20°Cの3つの温度条件下で挿し芽を行った.すべての温度で発根が認められ,総根長は20°Cが最も優れた.鉢に定植し,最低夜温5°Cの硬質フィルム被覆ハウス内で管理したところ,10°Cと15°Cが20°Cより開花が早かった.地下部に形成された塊根の乾物重には区間差がなかった.これらのことから,ラナンキュラスでは挿し芽による増殖が可能であり,挿し芽時の温度が発根やその後の生育開花に影響するが,塊根肥大には影響しないことが明らかになった.
  • 淨閑 正史, 奥田 将司, 滝沢 紀美子, 中川 卓也, 丸尾 達, 塚越 覚, 北条 雅章, 篠原 温
    2014 年13 巻2 号 p. 119-124
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/30
    ジャーナル フリー
    ピーマンでは栄養繁殖を前提として育成された品種の増殖を目的とした栄養繁殖法が報告されているが,株当たりの増殖効率が極めて低い.そこで,増殖効率の向上を目的として,母株の主茎摘心節位,側枝の腋芽残存数および培養液濃度が挿し穂採取数に及ぼす影響について検討した.その結果,母株を第8葉上で摘心し,一次側枝および二次側枝の腋芽2個が母株に残るように側枝を採取し,施肥量を多くすることで挿し穂の採取効率を大幅に向上できることを示した.また,得られた挿し穂の発根率は極めて高かった.
土壌管理・施肥・灌水
  • 中野 有加, 東野 裕広, 村岡 賢一, 中西 一泰, 柳井 洋介, 岡田 邦彦
    2014 年13 巻2 号 p. 125-133
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/30
    ジャーナル フリー
    地下水位制御システム(FOEAS:Farm-Oriented Enhancing Aquatic System)を施工した水田転換畑において,設定した地下水位が土壌水分量,気相の酸素濃度,秋まきキャベツの生育に及ぼす影響を評価した.地下水位を-30 cmに設定した高水位区,-60 cmに設定した低水位区を設けた.低水位区では高水位区よりも高い土壌水分吸引圧で推移したが,それは最大約40 kPaまでの緩やかな増加であった.両区とも,降水量に応じて地下水位が上昇した.降雨による土壌水分量の増加と地下水位の上昇に伴って気相率だけでなく作土の酸素濃度が低下し,特に高水位区では生育後期にしばしば0%まで低下した.冬季には,高水位区において土壌水分が高く維持された結果,低水位区よりもやや鉛直投影面積が大きかったが,後期には生育が抑制され,最終的な結球重は低水位区の約60%と小さかった.従って,FOEASが施工された水田転換畑において地下水位を高く一定に設定することは,湿害の危険性を増し,キャベツ収量を低下させる可能性が高いと考えられた.
栽培管理・作型
  • 杉浦 広幸, 河野 圭助, 香山 雪彦, 村松 康行
    2014 年13 巻2 号 p. 135-141
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/30
    ジャーナル フリー
    東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う福島市のシラカシ果実と葉における放射性セシウム濃度を定量し,汚染状況と汚染経路を検討した.2010年以前に展開し事故時に存在していたと推定される古い葉の放射性セシウム濃度は非常に高く12,000 Bq・kg-1(生体におけるCs-137とCs-134の合計)を超えていた.しかし,2012年度に展開した若葉は300 Bq・kg-1未満であり,大きく減少していた.2012年に採取した果実の放射性セシウム濃度は,最大で305 ± 8 Bq・kg-1であった.果実の汚染は表面を洗浄しても低下せず,また洗浄後の殻と種子(内部)に差がなく,表面汚染ではなかった.古い葉と新しい葉の放射性セシウム濃度は,ある程度の相関がみられた.また,新しい葉と果実の放射性セシウム濃度にも相関がみられ,果実/葉の比は約0.85であった.果実における放射性セシウム濃度と,株の周囲で舗装されていない部分(根圏域が露出している面積)の割合との間にも比較的高い相関がみられた.以上の結果から,果実と若葉の放射性セシウム汚染は,転流以外にも表層に張る根からの吸収経路の寄与が示唆された.
  • 吉川 瑛治レオナルド, Robson Ryu Yamamoto, José Luiz Petri, Fernando José Hawerr ...
    2014 年13 巻2 号 p. 143-153
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/30
    ジャーナル フリー
    ニホンナシ‘幸水’と‘豊水’の鉢植え樹を供試し,2007,2009,2010および2011年度の4か年にわたりシアナミド剤の散布処理を行った.その後22°Cの自然光ガラス室に移動させ,発芽・開花状態を調査した.ニホンナシの自発休眠覚醒の指標とされる7.2°C以下低温遭遇時間と,発育速度(DeVelopmental Rate, DVR)モデルによる発育指数(DeVelopmental Indexes, DVI)を対比させ,シアナミド剤の散布時期の有効範囲の設定を試みた.なお,DVI1は大谷(2006),杉浦(1997),が定義している,自発休眠覚醒期中の-6~12°Cの温度範囲を対象としたものである.そのDVI1は本研究でDVI(old)と定義した.一方,杉浦ら(2003)は自発休眠覚醒期中の21~24°Cの温度域は低温積算の一部を打ち消して自発休眠を逆進させる効果があると報告している.その報告に基づき求めたDVI1をここではDVI(new)と定義した.その結果,7.2°C以下の低温遭遇400~600時間処理の時点でシアナミド処理をすると,両品種の自発休眠打破の促進効果が認められた.両品種ともにDVI(new)(杉浦ら,2003)が0.65~0.70の範囲内でシアナミド処理すると,発芽および開花が改善され,開花日も促進した.DVI(old)(杉浦,1997)とDVI(new)において,発育ステージが進行し,DVI(old)では,1.03以上,DVI(new)では,0.80以上では処理の効果は弱まる傾向を示した.2011年度の秋冬季(10~2月)では他の年次より21°C以上に遭遇した時間が68時間長かったため,低温遭遇時間のみでシアナミド剤の散布時期を特定することは困難であったが,高温時の打ち消しを考慮したDVI(new)は,発育ステージを適正に評価した.以上の結果から,低温代替技術として,シアナミド処理を行う場合,気候温暖化に対応可能なDVI(new)モデルによる散布時期の予測が有効であることが示唆された.
  • 吉田 千恵, 高橋 正明, 岩崎 泰永, 古野 伸典, 松永 啓, 永田 雅靖
    2014 年13 巻2 号 p. 155-160
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/30
    ジャーナル フリー
    催色期のカラーピーマン果実の着色促進について,温度,植物ホルモンおよび光照射の影響について調査を行った.その結果,処理温度は20~25°C程度が適温であったが,温度だけでは着色促進効果は少なく,薄赤色の果実となった.また,10°Cの低温と30°C以上の高温でクロロフィルの減少が抑制され,30°C以上の高温ではクロロフィルの緑色と色素の赤色が混在する黒っぽい暗赤色の果実となった.植物ホルモン処理は,エチレンとジャスモン酸メチルの単独処理では着色促進効果がみられなかったが,両方を同時に処理すると色価が増加する傾向がみられた.しかし,その場合でも色価の増加は多くはなく,薄赤色となり,これらの植物ホルモン処理による追熟効果は期待できなかった.一方,20°Cで蛍光灯を用いて光照射を行ったところ,照射時間および照射強度が高まるほど,色価量が増加し着色促進効果が認められた.カラーピーマンの着色には,温度とともに光条件が大きく関与することが明らかとなった.
発育制御
  • 山口 訓史, 後藤 丹十郎, 小日置 佳世子, 大谷 翔子, 田中 義行, 吉田 裕一
    2014 年13 巻2 号 p. 161-167
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/30
    ジャーナル フリー
    最低気温がシュッコンカスミソウ‘アルタイル’の形態異常花序発生および切り花形質に及ぼす影響を調査した.形態異常花序を異常の特徴と程度に基づき3つのタイプ(1:茎が短いもの,2:2本の茎が癒着,3:ひどく湾曲し変形したもの)に分類した.形態異常花序の発生は初冬から早春にかけて増加した.軽度なタイプ1とタイプ2による形態異常は,開花時期に関係なくほぼ一定の割合で発生が認められたのに対して,切り花の外観を大きく損なうタイプ3は3月開花の個体で大幅に増加した.最低気温(7°C, 11°C, 15°C)が形態異常発生に及ぼす影響を調査したところ,タイプ3は最低気温が低いほど発生率が高かった.一方,切り花長,切り花重は最低気温が高いほど劣ることが明らかになり,形態異常花序発生を抑制したうえで,十分なボリュームの切り花を得るためには11°Cの加温が有効であると考えられた.栽培期間中の低温への積算遭遇時間とタイプ3の発生割合の関係を分析したところ,発蕾から開花までの積算低温遭遇時間と形態異常花序発生の間に相関は認められず,摘心から発蕾までの積算低温遭遇時間と形態異常花序発生との間には有意な相関が認められたことから,摘心から発蕾の期間における9°C以下の低温遭遇が重度の形態異常花序(タイプ3)の発生に関与することが示唆された.
収穫後の貯蔵・流通
  • 山崎 博子, 庭田 英子, 伊藤 篤史, 上町 達也, 石田 信昭, 矢野 孝喜, 長菅 香織, 稲本 勝彦
    2014 年13 巻2 号 p. 169-176
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/06/30
    ジャーナル フリー
    ニンニクの周年出荷にはりん茎収穫後の乾燥と長期間の貯蔵が必要である.本研究では長期貯蔵したニンニクにみられる,りん片表面が陥没する障害「くぼみ症」の発生条件を明らかにするため,‘福地ホワイト’りん茎の乾燥および貯蔵条件がくぼみ症の発生に及ぼす影響を調査した.収穫後,終日通風,昼間約34°C加温,夜間無加温の条件で乾燥(以下,テンパリング乾燥)したりん茎を異なる温度(-3°C,-2°C,-1°C)および湿度(標準,低湿)を組み合わせた条件で最長約10か月間貯蔵した.くぼみ症は-3°C貯蔵では発生したが,-2°C以上の貯蔵では湿度条件に関わらずほとんど発生しなかった.収穫後,テンパリング乾燥および33°C一定条件で乾燥したりん茎を-3°C,-2°C,0°Cで最長約8か月間貯蔵した.テンパリング乾燥中の平均温度は30°C前後であった.くぼみ症は33°C乾燥したりん茎ではいずれの貯蔵温度でも発生したが,テンパリング乾燥したりん茎では-2°C以上の貯蔵ではほとんど発生しなかった.くぼみ症は33°C乾燥後に-2°C以下で貯蔵した場合に特に激しく発生した.これらの結果から,高温での乾燥および低温での貯蔵はくぼみ症の発生を助長する要因と考えられた.現在,青森県においてニンニクの周年出荷のために行われている-2°C貯蔵では,乾燥条件がくぼみ症の発生に大きく影響することが示された.テンパリング乾燥は高品質なニンニクを周年出荷するため-2°C貯蔵と組み合わせる乾燥法として有望と考えられた.
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