抄録
三倍体ニホンスモモ‘貴陽’の結実不良を解明するために,落果調査と胚珠の内部形態観察を行った.‘貴陽’は‘太陽’より早期落果が激しく,受粉42日後の落果率は‘太陽’が77.8%であるのに対し,‘貴陽’では88.0%であった.開花期における‘貴陽’の胚のうの60%以上が未分化であった.未分化以外の胚のうでは,‘貴陽’は‘太陽’と同様の発達過程を経たものの,発達遅延や退化したものが‘太陽’より多く観察された.受粉14日後以降では,‘貴陽’の胚と胚乳発育は,‘太陽’と比べ,発達遅延が認められ,それ以外にも接合子や胚乳核がない異常なものも観察された.受粉35日後の前胚と胚乳核の観察された胚珠は‘太陽’が91.7%であるのに対し,‘貴陽’は75.0%であった.また,落下果実の胚珠は,‘太陽’では胚のうの未分化によるものがほとんどであったのに対し,‘貴陽’ではそれに加えて胚のうの発達遅延や退化,接合子や胚乳核の未分裂が認められた.