2017 年 16 巻 3 号 p. 325-331
ワケギ鱗茎を種球として利用するための慣行貯蔵方法である軒下吊り下げ貯蔵において,春季に掘り上げて年末の定植に利用可能な鱗茎割合の向上を目的とし,貯蔵中の遮光処理が鱗茎の品質に及ぼす影響を調査した.軒下吊り下げ貯蔵中のワケギ鱗茎では,8月中旬頃に自発休眠および他発休眠が打破され,CO2交換速度の増加と重量の減少が見られ始め,9月上旬から急激に軟化の発生が増加した.貯蔵中の遮光処理は,慣行貯蔵と比較して8月中旬以降の鱗茎の呼吸速度の増加および乾物での全糖含有率の低下を抑制した.これにより,最終定植時期となる年末における鱗茎重量の減少を無処理と比較して約10%,軟化鱗茎の発生を約20%それぞれ抑制し,定植可能な鱗茎が20%増加した.