省力化栽培可能な黄色い果皮で貯蔵性が良く,甘みの強い品種である‘HFF63’を育成した.DNAマーカーを利用した遺伝子型解析の結果,本品種の両親はどちらが花粉親,種子親かは明らかにできないものの,‘ふじ’および‘東光’の組み合わせであると考えられた.育成地での収穫期は11月上~中旬で,樹姿は‘ふじ’と似ており,同様の樹体管理が可能である.また,1-MCP処理を行わなくても貯蔵150日後までは1-MCP処理果実と同程度の果実品質を示し,極めて高い貯蔵能力を有することが明らかとなった.これは,果実内のエチレン濃度が低く保たれたことによる.果実の糖組成はスクロースの割合が高いことが濃厚な甘みの一因となっている.果実新鮮重は350 g程度であり,糖度は15°,酸度は0.3%前後で,貯蔵中も高い果肉硬度が維持される.品種名である‘HFF63’とは別に一定の品質を満たした果実に「きみと」の登録商標を利用する予定である.今後,省力栽培可能な高品質果実として贈答用途としての利用が期待される.