2019 年 18 巻 2 号 p. 173-184
国産リンゴの周年供給体制を強化するため,長期貯蔵後も高い品質を維持しうる品種を選定し,各品種と貯蔵技術の最適な組み合わせを明らかにすることを目的とした.まず,中・晩生の30品種を対象にCA貯蔵または1-MCPくん蒸剤の利用による品質保持効果を検証した.現行の後期販売の主体であるCA貯蔵の有袋 ‘ふじ’ と同等以上に品質が安定した品種として,‘秋陽’,‘世界一’,‘ジョナゴールド’,‘こうたろう’,‘シナノゴールド’,‘あおり15’,‘アンビシャス’ および ‘あおり21’ の8品種を選定した.次に,これら8品種を対象としてCA貯蔵,1-MCPくん蒸剤および1-MCP + CAによる品質保持効果を検証した.その結果,‘世界一’,‘あおり15’,‘アンビシャス’ および ‘あおり21’ は,これらの方法を利用しても長期貯蔵後に高い品質を維持するのは難しいと考えられた.一方,‘秋陽’,‘ジョナゴールド’,‘こうたろう’ および ‘シナノゴールド’ は1-MCP + CAの方法により果皮褐変や果肉褐変の障害がなく,高い品質が維持された.また,この場合の1-MCPくん蒸剤の処理適期は,‘秋陽’ および ‘ジョナゴールド’ で収穫3日後まで,‘こうたろう’ および ‘シナノゴールド’ で収穫6日後までと考えられた.