園芸学研究
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栽培管理・作型
カラムナータイプのリンゴの隔年結果を回避するための着果基準に関する事例研究
馬場 隆士守谷 友紀阪本 大輔花田 俊男岩波 宏
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2020 年 19 巻 3 号 p. 285-292

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抄録

系統5-12786を材料として,カラムナータイプの隔年結果を回避するための着果基準に関する知見を獲得することを目的とした.まず,結実開始から5年間のデータを用いて,収穫量が維持可能な果数TCA比を求めた.定植後,予備摘果にNAC剤を用い,仕上げ摘果をせずに生育を調査した結果,結実3年目から着果負担の増大に伴って収穫量が激しく増減する隔年結果のパターンを示した.その中で,果数TCA比が3果・cm–2であれば90%以上の個体で花芽数や収穫量が維持できていた.次に,8年生樹を用いて,その果数TCA比および果実を樹体の一部分に局在させる着果法が花芽形成に及ぼす影響を検討した.その中で花芽形成に大きな影響を及ぼした要因を考察した.満開30日後に摘果を行い,果数TCA比で2~3果・cm–2を残したところ,花芽形成は認められたものの,花芽率は10%以下と低かった.果実を全体に分散させた場合と比べて,果実を局在させると花芽は無着果部位に集中して形成されるようになり,さらに全体の花芽形成量が低下した.本研究で用いた説明変数の中では,長枝の発生率が最もよく花芽数を予測していた.着果負担の指標の中では,果そう数果数比が最も花芽数の予測性が高く,着果部長果数比がそれに続いた.一方,葉果比はこれらと比べて予測性が低く,葉果比30程度では花芽率が10%に満たなかったことなどから,カラムナータイプでは葉果比は非カラムナー性の品種ほど着果負担の指標として有効ではない可能性が考えられた.長枝には花芽が高頻度で形成されていたが,カラムナータイプの樹形特性上,着果部位としては利用しづらいため,短い枝で花成を促進する方法を考案する必要がある.以上から,今後,果実配置や長枝の管理が花芽形成に及ぼす影響に注目して,より多くの品種・系統で着果負担と花芽形成との関係を精査することが,カラムナータイプにおいて隔年結果を回避する方法の開発に重要であると考察した.

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