園芸学研究
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栽培管理・作型
‘ヒリュウ’台ウンシュウミカン果実の発育・成熟過程における果汁の糖集積の特徴
矢羽田 第二郎牛島 孝策松本 和紀
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2003 年 2 巻 1 号 p. 39-44

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抄録

‘ヒリュウ’を台木に用いたウンシュウミカン‘今村9号’の果実発育・成熟過程における果汁の糖含量の変化をカラタチ台と比較し,葉や根の樹体生理的な特性と糖集積との関係について検討した.
果汁の糖含量は,10月頃まではショ糖,ブドウ糖および果糖含量とも‘ヒリュウ’台樹の方がカラタチ台樹に比べて多く,糖組成比には大きな違いが認められなかった.その後,果実の成熟が進行した11~12月にはショ糖の含量・組成比とも‘ヒリュウ’台樹の方が顕著に高まり,糖組成に占めるブドウ糖,果糖の割合が低下した.この間,果汁の糖含量は8月から12月まで常に‘ヒリュウ’台の方が高く推移した.
‘ヒリュウ’台樹はカラタチ台樹に比べて葉の光合成能力や細根の呼吸速度が劣り,葉の水ポテンシャルが低下して樹体は日中に強い水ストレス状態となった.‘ヒリュウ’台ウンシュウミカンでは,果実発育の早い段階から成熟期に至るまでの継続的な樹体の水ストレス状態が,果汁の糖集積に対して促進的な作用を及ぼしているものと推察された.しかしながら,通常,水ストレス処理により顕著となる還元糖の増加が認められなかったことから,‘ヒリュウ’台利用による果実への糖集積の機構は,土壌乾燥による水ストレス処理を行った場合とは異なる可能性が考えられた.

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