園芸学研究
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2 巻, 1 号
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原著論文
育種・遺伝資源
  • 堀田 行敏, 菅原 眞治, 矢部 和則
    2003 年2 巻1 号 p. 1-4
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    ナス栽培従事者に対するアンケート調査から,ナスの栽培作業を不快にする特性は,とげ,毛じおよび紫色の色素であることがわかった.その中でも特に,とげは作業の際の痛みの原因となるとともに,果実を傷つけるため,最も改善すべき特性であった.
    オランダのとげなし性品種‘Freia’と‘千両2号’および‘美男’の交雑後代から,わが国の品種としての実用形質をもつとげなし性の系統を育成できた.また,‘Freia’由来のとげなし性はわが国のナス品種の実用性を損なう劣悪な形質と密接な関連はないと考えられた.両親にとげなし性を導入することによって,とげなし性のF1品種の育成が可能であることが示唆された.
  • 由比 進, 釘貫 靖久, 飛騨 健一
    2003 年2 巻1 号 p. 5-8
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    ‘はくさい中間母本農6号’は,晩抽性のカブとハクサイの雑種後代から育成された育種素材である.この晩抽性は低温要求性が高いためであり,晩抽性の実用品種が早期抽だいを起こす条件下でも抽だいせず,高い商品率が得られた.また,普通ハクサイとの雑種後代(F2)において,‘農6号’と同程度の晩抽性個体が10%以上出現した.以上から,春ハクサイの安定・省力,さらには省エネルギー栽培のために,本系統の実用F1品種育成への利用が期待される.本系統は,独立行政法人生物資源研究所のジーンバンクから入手可能である.
繁殖・育苗
  • 角田 真一, 佐藤 裕隆, 大志万 浩一, 丸尾 達, 小堀 英和
    2003 年2 巻1 号 p. 9-13
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    浄水場で発生する浄水ケーキを堆積発酵させる場面において,バーク堆肥の添加が浄水ケーキ中の無機態窒素量やマンガン含有量に及ぼす影響,また,発酵後の処理ケーキを培養土として利用した場合に,植物の生育に及ぼす影響について調査した.実験は,浄水ケーキおよび浄水ケーキとバーク堆肥の混合物を堆積発酵処理することにより,堆積中の温度と処理ケーキ中の窒素およびマンガンの挙動に及ぼす影響を比較検討した.その結果,
    (1)バーク堆肥を予め添加することにより,発酵が促進されると同時に,処理ケーキ中の二価マンガン含有量が低減した.
    (2)無機態窒素含有量は両区で傾向が異なり,添加区が無添加区より低い傾向であった.
    (3)堆積発酵後の処理ケーキを原料にした培養土を作成し,ユウガオを用いた栽培試験を行った結果,浄水ケーキの混合割合が70%と高い場合には,バーク堆肥を予め添加した区が無添加区に比べマンガン含有量が低く,ユウガオの生育は良好となったが,混合割合が55,40%では両区に差はみられなかった.
    本実験結果から,浄水ケーキを培養土原料として利用する際に,過剰の二価マンガンを低減するためには,有機物を添加し,発酵を促すことが望ましいことが明らかとなった.
  • 藤原 隆広, 吉岡 宏, 熊倉 裕史, 佐藤 文生, 中川 泉
    2003 年2 巻1 号 p. 15-20
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    キャベツセル成型苗の生育と品質の均一化を目的として,定植前の5日間0.3%濃度にNaClを添加した液肥(園試処方標準培養液1/5培液)を底面給水する処理(NaCl処理)が根鉢水分の均一性,苗の蒸散特性ならびに苗群落における草丈に及ぼす影響について検討した.
    1.根鉢の含水率が45%以下になると,地上部の水ポテンシャルが低下し,苗が萎れた.
    2.灌水後1日経過したときのNaCl処理区の根鉢の含水率は,対照区よりも高く保たれ,根鉢の水分むらが小さくなった.
    3.セル成型育苗では,苗周辺の相対湿度がトレイの中央部で外縁部よりも約15%高かった.
    4.NaCl処理により苗の蒸散速度は減少し,トレイ中央部と外縁部の苗の蒸散速度の較差が減少した.
    5.NaCl処理によってキャベツセル成型苗群落の中央部の徒長が抑制された.
    以上の結果から,NaCl処理による根鉢水分の斉一性の維持は,苗の生育・品質の斉一性の向上を図る上で有効な技術になるものと考えられる.
  • 壇 和弘, 今田 成雄
    2003 年2 巻1 号 p. 21-24
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    本研究は,高出芽率キャベツ種子選別のための選別方法の有効性を評価することを目的とし,キャベツ種子浸漬液への蛍光物質の漏出を判別することで選別した種子のセルトレイでの出芽率および苗の良否を調査した.未選別種子のセルトレイでの出芽率は95.2%で,異常個体の割合は3.0%であった.一方,浸出液に蛍光が認められた種子を除くと,出芽率は98.5%以上(P <0.05)になり,異常個体の割合も0.9%以下(P <0.05)に低下した.
    これらの結果より,キャベツ種子の浸出液の蛍光判別による選別方法は,セルトレイでの出芽率の向上および異常個体の除去に有効であることが確認された.
  • 高村 武二郎, 名木田 由香, 田中 道男
    2003 年2 巻1 号 p. 25-28
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    シクラメンの体細胞胚形成と体細胞胚の生育に及ぼす温度の影響を調査した.カルス誘導およびカルスからの体細胞胚誘導を20,25または30℃で試みたところ,25または30℃で形成されたカルスと比較して,20℃で形成されたカルスは継代培養においてごく少数の体細胞胚しか形成しなかった.また,15,20または25℃における体細胞胚の発芽と生育を調査したところ,25℃では体細胞胚の発芽および生育が明らかに阻害された.なお,体細胞胚の発芽には20℃が,発芽後の生育には15℃が適しているものと考えられた.これらの結果から,シクラメンの体細胞胚形成及び体細胞胚からの植物体再生には各培養ステージでの好適温度条件が異なることが示唆された.
栽培管理・作型
  • 松原 健一, 稲本 勝彦, 土井 元章, 今西 英雄
    2003 年2 巻1 号 p. 29-33
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    我が国の気候条件下において景観形成材料として利用することを想定し,16種類の球根植物について耐暑性の評価を行おうとした.大阪府堺市において外気温と同一(±0℃区),外気温より5℃高く(+5℃),あるいは(−5℃区)なるよう,外気温に対して追随制御を行った人工気象室内で1999年7月9日あるいは7月16日から9月20日の間植物を栽培し,生育様相を観察した後,9月20日に植物を戸外に搬出し,引き続き観察した.ダリア,オリエンタル系ユリ‘ホワイト・エンゼル’では+5℃区ですべての個体が枯死した.その他の品目では,より高温下での栽培で,出芽の遅延(ムスカリ,ニホンスイセン),展開葉数の減少(アガパンサス),草丈の減少(ムスカリ,モントブレチア),シュート数の減少(春咲きグラジオラス),開花率の低下(アマクリナム,モントブレチア,春咲きグラジオラス,ジンジャ)が認められた.ラッキョウ,シラン,リアトリス,アジアティック系ユリ‘エリート’,リコリス,ゼフィランサスでは,高温による生育への影響は認められなかった.また,カンナは高温下で良好な生育を示した.
  • 渡辺 慎一, 中野 有加, 岡野 邦夫
    2003 年2 巻1 号 p. 35-38
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    スイカ立体栽培における着果節位が果実重に及ぼす高温の影響を,果実肥大期の葉面積と関連づけて調査した.整枝法は一次側枝二本仕立て一果どりとした.着果節位が高いほど果実重は大きくなったが,糖度は低くなった.着果節位が高いほど果実肥大期を通して個体当たり総葉面積が大きかった.授粉5日後,20日後および40日後(収穫時)の総葉面積と収穫時の果実重との間にはいずれも高い正の相関が認められた.着果節位が低いほど,初期の果実への光合成産物の供給量が少ない上に,着果後の光合成生産量も少なくかつ葉面積拡大との間で光合成産物の分配の競合が起こるため,果実が小さくなるものと考えられた.
  • 矢羽田 第二郎, 牛島 孝策, 松本 和紀
    2003 年2 巻1 号 p. 39-44
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    ‘ヒリュウ’を台木に用いたウンシュウミカン‘今村9号’の果実発育・成熟過程における果汁の糖含量の変化をカラタチ台と比較し,葉や根の樹体生理的な特性と糖集積との関係について検討した.
    果汁の糖含量は,10月頃まではショ糖,ブドウ糖および果糖含量とも‘ヒリュウ’台樹の方がカラタチ台樹に比べて多く,糖組成比には大きな違いが認められなかった.その後,果実の成熟が進行した11~12月にはショ糖の含量・組成比とも‘ヒリュウ’台樹の方が顕著に高まり,糖組成に占めるブドウ糖,果糖の割合が低下した.この間,果汁の糖含量は8月から12月まで常に‘ヒリュウ’台の方が高く推移した.
    ‘ヒリュウ’台樹はカラタチ台樹に比べて葉の光合成能力や細根の呼吸速度が劣り,葉の水ポテンシャルが低下して樹体は日中に強い水ストレス状態となった.‘ヒリュウ’台ウンシュウミカンでは,果実発育の早い段階から成熟期に至るまでの継続的な樹体の水ストレス状態が,果汁の糖集積に対して促進的な作用を及ぼしているものと推察された.しかしながら,通常,水ストレス処理により顕著となる還元糖の増加が認められなかったことから,‘ヒリュウ’台利用による果実への糖集積の機構は,土壌乾燥による水ストレス処理を行った場合とは異なる可能性が考えられた.
  • 大川 浩司, 大竹 良知, 菅原 眞知
    2003 年2 巻1 号 p. 45-49
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    流通過程で10℃前後の温度に遭遇することにより発生するキュウリ果肉褐変症に及ぼす果実肥大期の栽培条件の影響を検討した.
    春季~初夏季(4~5月)の果実は,冬季(12~3月)の果実よりも果肉褐変度が高かった.栽培中の管理最低温度が高い場合に果肉褐変度は高かった.収穫直前の天候は,晴れの場合が雨(雪)天や曇天の場合よりも果肉褐変度が高かった.また,肥大がおう盛な100 g 前後の果実が最も果肉褐変度が高く,200 g以上の大果では低かった.
    以上の結果から,肥大がおう盛になる栽培条件で収穫された果実は,流通中10℃に遭遇した場合に果肉褐変症を発生しやすいと考えられる.
作物保護
  • 大石 一史, 奥村 義秀, 森岡 公一
    2003 年2 巻1 号 p. 51-54
    発行日: 2003年
    公開日: 2008/01/22
    ジャーナル フリー
    CSVdの感染の有無をドットブロットハイブリダイゼーションで診断するため,RNAの抽出法を改良した.
    1.キク成熟葉を等量のCTABバッファーで磨砕し,上清を煮沸して遠心分離し,上清に酢酸ナトリウムとイソプロパノールを加え,2Mの塩化リチウムに重層,遠心する方法でCSVd-RNAを抽出した.この煮沸法は,フェノールなどの劇物を必要としない安全な抽出法である.
    2.ノーザン分析では,煮沸法で抽出されたCSVd-RNAの一部は分解されて低分子化したが,一部は分解されずに残存していた.この結果は,煮沸法で抽出されたCSVd-RNAを用いたRT-PCRで期待されるサイズのDNAが得られたことからも確かめられた.
    3.CSVdを保毒したキク葉をCTABバッファーで磨砕し,煮沸法およびフェノール抽出で精製したRNAをドットブロットハイブリダイゼーションで検出したところ,煮沸法はフェノール抽出よりかなり強いシグナルが得られ,CSVdの検出感度が高いことが分かった.
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