抄録
8月中旬に採取した六倍体カキ(Diospyros kaki)‘藤原御所’の未熟果実より得られた種子中から胚を切り出し救助培養を行った.植え付けた103個の胚のうち102個がゼアチン5μMを添加したMS寒天培地で発芽した.得られた102個体の植物体の倍数性をフローサイトメトリーによって調査したところ,67個体が六倍体であり,残りの35個体が六倍体よりは大きな倍数性を示すことが明らかになった.これらの多くは九倍体あるいは12倍体であり,中には異数体も存在するものと推定された.得られたいくつかの植物体について,根端分裂細胞の染色体観察を行ったところ,フローサイトメトリーで倍数性変異がみられると推定された個体の染色体数は六倍体の90本より多いことが確認された.無核完全甘ガキ品種を育成するための育種母本としての‘藤原御所’の利用可能性について議論した.