園芸学研究
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栽培管理・作型
数種の新規株ゆるめ処理がクリ幼木の凍害軽減に及ぼす効果
水田 泰徳織邊 太田中 宏明中元 陽一松本 和浩
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2021 年 20 巻 3 号 p. 305-313

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抄録

本研究では,フォーク型バケット(フォーク処理),逆U字型の二股チゼル(ブレーカ処理),人力の茶園用反転鍬(反転鍬処理)およびトラクターに装着した全層破砕機(全層破砕処理)を用いた新規株ゆるめ処理がクリ幼木の耐凍性の向上に及ぼす効果を検討した.フォーク区,ブレーカ区は,無処理区では凍害が発生する条件下においても標準バケット区と同様に全く凍害が発生しなかったことから,株ゆるめ処理として有効であることが確認できた.一方,全層破砕区は凍害の軽減効果が一部認められ,簡易な軽減対策として有効であった.茶園用の反転鍬処理区の芽の耐凍温度は挿入箇所数にかかわらず無処理区と比較して著しく低く,油圧ショベルを用いたフォーク区と同様の値を示した.また,茶園用反転鍬処理区は凍害が多発する水田転換園においても,凍害発生を著しく抑制したことから,簡易な株ゆるめ処理として有望である.凍害防止のメカニズムについては主に樹の含水率の低下との関係がみられたが,他の生理学的要因の影響も示唆された.また,株ゆるめ処理は11月に実施することにより,従来に比べ早期に耐凍性を付与可能で,ハードニング期の凍害抑制効果が期待できることが明らかとなった.このように,本研究で検証した新規株ゆるめ処理および新規処理時期はいずれも慣行の株ゆるめ処理と同等以上の効果が期待でき,処理可能な園地の形状,樹高の条件を拡大できることを明らかにした.

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© 2021 園芸学会
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