園芸学研究
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発育制御
リンゴ5品種における休眠特性と低温要求の評価
劉 嘉儀小森 貞男工藤 静香熊谷 初美伊藤 大雄渡邉 学
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2021 年 20 巻 3 号 p. 323-331

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抄録

本研究では,リンゴにおける新しい作型の開発や育種年限の短縮に関する基礎的知見を得ることを目的に,リンゴ‘ふじ’,‘王林’,‘紅玉’ および ‘国光’ とインドネシアで摘葉による二期作に使用されている ‘Rome Beauty’ について,自発休眠の導入期,最深期および覚醒期の把握ならびに自発休眠打破に必要なチルユニット(CU)積算を2または3年間調査した.その結果,自発休眠打破に必要なCUは ‘Rome Beauty’,‘国光’ および ‘紅玉’ で多く,我が国で不時開花しやすい ‘王林’ で少なかった.‘ふじ’,‘紅玉’ および ‘国光’ の自発休眠最深期は,他の品種よりも長かった.‘国光’ および ‘ふじ’ における自発休眠最深期の開始日と自発休眠覚醒期間は同じであった.‘紅玉’ は ‘ふじ’ および ‘国光’ よりも自発休眠最深期の開始が早く,覚醒期が長かった.‘Rome Beauty’ は自発休眠最深期に入る時期が最も遅かった.‘王林’ の自発休眠最深期に入る時期も ‘Rome Beauty’ とほぼ同じであったが,‘Rome Beauty’ の自発休眠最深期の期間は ‘王林’ の2倍以上長かった.以上のことから,‘王林’ のように低温要求が少なく自発休眠最深期が短い品種,または ‘王林’ および ‘Rome Beauty’ のように自発休眠最深期に入る時期が遅い品種が摘葉を利用した二期作に適していることが示唆された.

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