園芸学研究
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作物保護
SNPマーカーを用いた香酸カンキツの品種識別技術の確立
新見 恵理藤井 浩太田 智岩倉 拓哉遠藤 朋子島田 武彦
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2022 年 21 巻 1 号 p. 111-122

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抄録

香酸カンキツの果実は調理や加工などへの利用が多く,新品種の育成者権を保護するためには,種苗の適正管理のための調査に加え,加工品や原材料の果実についても育成者権の権利侵害に対する調査が必要であることから,果実や加工品を対象とした品種識別技術の確立が求められている.これまでに開発した生食用カンキツを主な対象としたSNP品種識別技術を基に,主要な香酸カンキツの品種識別に適用できるようにSNPマーカーを新たに設計し,カンキツの9本の染色体の遺伝子型が評価できる10種類のSNPマーカーからなる品種識別用のマ―カーセットを開発した.新たなマーカーセットの利用により,香酸カンキツの10品種と農研機構および徳島県で育成された香酸カンキツ2品種,生食用の73品種を相互に識別できる.分析した85品種には43組合せの親子関係がみられ,トリオ間でSNPの遺伝に矛盾はなかった.また,香酸カンキツの主要品種の果皮,果汁,搾汁酢およびドライフルーツにもこれらのSNPマーカーが適用可能である.本報告で開発したSNP品種識別技術は,生鮮果実などの輸入差止申立に必要な迅速な検査が求められる税関などの検査現場に利用できる実用技術であり,我が国で育成した優良品種の知的財産保護の強化が期待できる.

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