園芸学研究
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栽培管理・作型
マルチ栽培がウンシュウミカンのフラベドのカロテノイド代謝関連遺伝子の発現に及ぼす影響
濵﨑 櫻山家 一哲稲葉 迅北谷 友梨佳北村 陽山本 梨沙馬 剛張 嵐翠加藤 雅也
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2022 年 21 巻 2 号 p. 175-180

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抄録

ウンシュウミカンのフラベドに含まれるβ-クリプトキサンチンの蓄積がマルチ栽培によって増大するメカニズムを明らかにするため,マルチ栽培の ‘青島温州’ のフラベドについて9月から11月にかけてのβ-クリプトキサンチン含量とカロテノイド代謝経路に関連する酵素遺伝子の発現量を調査した.マルチ処理した ‘青島温州’ の果実のフラベドにおいて,9月はβ-クリプトキサンチン含量に差がみられなかったが,10月は無処理の1.9倍, 11月は1.4倍とβ-クリプトキサンチン含量が増大していた.これらのフラベドでは9月および10月時点でカロテン生成とキサントフィル生成に関わる酵素遺伝子CitPSYCitPDSCitZDSCitLCYb2CitHYbCitZEPの発現量が無処理よりも高くなっており,特にCitLCYb2CitHYbCitZEPの発現量は対照区との差が大きかった.11月はCitLCYb1CitLCYb2が無処理より顕著に発現量が高く,CitNCED2CitNCED3の発現量は低かった.CitLCYb1CitLCYb2はどちらもβ-カロテンの生成と関係しており,CitLCYb2の発現量はマルチ処理により9月から11月まで顕著に高かった.以上のことから,マルチ栽培によってウンシュウミカンのフラベドにおけるカロテノイド代謝経路のβ,β-キサントフィル合成に関係する酵素遺伝子の発現量が上昇することで,β-クリプトキサンチン含量が増加すると考えられ,中でもCitLCYb2の発現量の著しい上昇が大きく影響する可能性が示唆された.

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