園芸学研究
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栽培管理・作型
土壌中のクロピラリドが農作物の生育および地上部形態に及ぼす影響
並木 小百合清家 伸康
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2022 年 21 巻 3 号 p. 315-325

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抄録

我が国では近年,米国などの飼料の輸出国で使用されている除草剤クロピラリドが残留した堆肥の施用が原因と疑われる農作物の生育障害が発生しており,栽培初期にクロピラリドによる影響の有無を確認する必要がある.そこで本研究では,我が国の主要な13科23種の農作物について土壌中濃度に応じたクロピラリドによる生育および形態への影響を比較し,その症状の特徴を葉の形状に着目して整理した.ネギ,エンバク,オオムギ,コマツナ,ソバ,ホウレンソウおよびゴマはクロピラリドによる影響は認められなかったが,マメ科,ナス科,キク科などの7科16種の作物では地上部乾物重の減少や形態への影響が認められた.特に, マメ科, ナス科, キキョウ科, キク科およびセリ科に属する13種の作物では,葉の形状に関わらず,葉身が萎縮する縮葉がみられた.これらの作物は縮葉よりも早期に葉縁の巻き込みやカッピング,鋸歯の巻き上がりが現れており,縮葉の初期症状と考えられた.これらの縮葉の初期症状は,葉身の形状ではなく鋸歯の有無といった葉縁の形状で決まることが示唆された.従って,マメ科,ナス科,キク科などのクロピラリドへの感受性の高い科に属する作物についてクロピラリドの影響の有無を確認する場合,葉縁の形状に着目すると判定しやすいと考えられる.

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