抄録
がんは長年にわたる進展過程で免疫から逃避して増殖し、臨床で見つかるがんでは、多様な免疫細胞や分子が関与して、がんの増殖・生存・浸潤に促進的かつ免疫抑制的ながん微小環境が構築されている。がん免疫病態は、がん種ごと、同じがんでもサブセットごと、また症例ごとに異なり、免疫状態の個人差は、遺伝子異常によるがん細胞の性質、患者の免疫体質、喫煙や腸内細菌などの環境因子に規定される。効果的ながん治療のためには、患者ごとに適切な免疫制御が重要となるが、そのためには、ヒトがん免疫病態のさらなる解明と制御法の開発が期待される。