2022 年 21 巻 4 号 p. 413-423
サルビア・スプレンデンス(S. splendens Sellow ex Schult.)とサルビア・コクシネア(S. coccinea Buc’hoz ex Etl.)の園芸品種の合計9品種の花色と花弁に含まれるアントシアニンを調査した.‘フラメンコレッド’ と ‘アカプルコ’ は,花色の値が近い赤色系であり,主要花色素がいずれもペラルゴニジン3-カフェオイルグルコシド-5-マロニルグルコシド,ペラルゴニジン3-カフェオイルグルコシド-5-ジマロニルグルコシド,ペラルゴニジン3-p-クマロイルグルコシド-5-マロニルグルコシドおよびペラルゴニジン3-p-クマロイルグルコシド-5-ジマロニルグルコシドであった.‘フラメンコレッド’,‘フラメンコローズ’ および ‘フラメンコサーモン’ におけるアントシアニンの化学構造を比較したところ,‘フラメンコローズ’ では ‘フラメンコレッド’ の主要アントシアニンのうちマロン酸2分子が結合したアシル化アントシアニン,‘フラメンコサーモン’ ではp-クマル酸が結合したアシル化アントシアニンが含まれておらず,また,含有アントシアニン濃度の低下も確認され,これらの要因が色調に影響している可能性が考えられた.‘フラメンコパープル’ と ‘フジプルコ’ では,花色の値はどちらも紫色系であったが,主要アントシアニンは異なっていた.‘フジプルコ’ の主要アントシアニンは,シアニジン3,5-ジグルコシド,ペラルゴニジン3,5-ジグルコシド,シアニジン3-グルコシド-5-マロニルグルコシドおよびペラルゴニジン3-グルコシド-5-マロニルグルコシドと同定され,これら4種のアントシアニンは,サルビア・コクシネアの園芸品種の花弁に含まれるアントシアニンでは新たな報告となった.