2022 年 21 巻 4 号 p. 433-440
近年の温暖化に伴い,九州などの暖地で,ニホンナシ露地栽培における発芽不良の発生が顕在化してきている.そこで本研究では,発芽不良の発生軽減が期待される春施肥の有効性を,‘豊水’ および ‘幸水’ において,5年間継続して検証した.両品種において,施肥時期を慣行の秋施肥から春施肥に変更することで,耐凍性が向上し,5年間安定して発芽不良の発生が軽減された.一方,9月と3月に分施する秋春施肥では,耐凍性の向上効果および発芽不良の軽減効果は見られなかった.なお,春施肥に変更したことによる果実品質への悪影響は認められなかった.以上のことから,凍害によるニホンナシの発芽不良発生の軽減策として,全量を春に施用する施肥法は,有効的かつ実用的なニホンナシ露地栽培技術であることが明らかになった.