園芸学研究
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収穫後の貯蔵流通
ATR-MEMS-赤外分光法を用いるトマトおよびイチゴ汁液中総遊離糖含有量の定量
伊藤 秀和
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2022 年 21 巻 4 号 p. 491-499

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抄録

ATR-MEMS-赤外分光法を用いたトマトおよびイチゴ汁液中総遊離糖含有量の迅速定量法を開発した.本法においてはトマトおよびイチゴ汁液は希釈せずに測定し,水のスペクトルを直接差し引かずに説明変数の少ない方法を目指した.併せて,糖水溶液では糖濃度を変えて測定した.赤外分光法と同様の振動分光法である近赤外分光法と異なり,糖の水溶液,トマトおよびイチゴ汁液を測定した赤外光吸収スペクトル上で,スペクトルの微分処理なしで糖の吸収帯を目視により確認できた.目的変数がトマトおよびイチゴ汁液中総遊離糖含有量の場合,他の成分による吸収を配慮すれば,それぞれ1032 cm–1,1000 cm–1の吸光度を説明変数として採用可能であった.トマトよりもイチゴで低波数側の吸光度が採用されたことは,イチゴの構成糖であるスクロースの吸収がグルコースとフルクトースに比べて低波数側にも存在することと対応する.また,トマトおよびイチゴにおいて,Bland-Altmanプロットは誤差の許容範囲(LOA)内にプロットされたことから,HPLCによる総遊離糖含有量の参照値とATR-MEMS-赤外分光法による総遊離糖含有量の定量値(説明変数は1つのみ)が同等であることを確認できた.

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