2023 年 22 巻 4 号 p. 267-275
平地の同一場所で,同一年に同一品種を供してタマネギの秋播き栽培および春播き栽培を行い,りん茎肥大時から収穫時の生育の差異について比較し,りん茎重に影響する要因について検討した.春播き栽培は,秋播き栽培に比べて,りん茎肥大始期が1か月,収穫時期も18~27日遅れ,りん茎重が劣った.りん茎肥大開始時期については,生葉数4枚とその後の基準温度5°Cの有効積算温度(積算温度)が関連することが示唆された.主茎葉芽の分化は,積算温度と関係が認められた.最終的な主茎分化葉芽数は,春播きと秋播きで差がみられなかった.定植後に一定の積算温度を必要とする主茎葉分化停止の2週間後に倒伏期となることから,春播き栽培は,秋播き栽培に比べて積算温度が影響して収穫期が20日程度遅くなると考えられた.止葉の葉芽分化時期は,作型や生育量の影響を受けるが,止葉の出葉期は,作型にかかわらず5月下旬であることから,春播き栽培では,総出葉数が少なく,りん茎構成葉数も少なくなり,りん茎重に影響したと考えられた.従って,春播き栽培でのりん茎重の向上には,総出葉数を増やし,りん茎構成葉数を増やすことが重要であると示された.