本研究では複数の台湾ウメと日本ウメについて収穫後果実の低温応答および1-MCP処理による品質保持効果の調査を行った.いずれの品種においても15°C貯蔵に比べ,2,5および8°C貯蔵のほうが果実軟化は遅延し,温度が低いほどその効果は高くなった.調査した品種の中では,低温障害の発生がなかった‘白王’と低温障害果発生率が非常に低かった台湾ウメの‘台湾’はそれぞれ2°Cでの長期貯蔵が可能であると考えられた.一方,2,5および8°C貯蔵でいずれも低温障害が多発した‘古城’は長期貯蔵向きではないと考えられた.その他の5品種(‘南高’,‘二青梅’,‘ST’,‘白粉梅’,‘85486’)については2°C貯蔵で低温障害が多発したため,5°Cまたは8°C貯蔵が適切であると判断された.また,台湾ウメの‘二青梅’および日本ウメの‘南高’への1-MCP処理により,両品種とも果実軟化,果皮色変化といった果実成熟形質およびエチレン生成の抑制効果が認められた.果皮色変化については15°Cおよび20°C貯蔵,果実軟化については15°C貯蔵で‘二青梅’の1-MCP処理による成熟抑制効果が高かった.一方で,両品種とも0°Cや5°Cのような低温貯蔵下における1-MCP処理は低温障害を誘発し,品質保持を逆に悪くした.以上の結果を総合すると,収穫期の遅い台湾ウメは日本ウメと同等以上の低温耐性をもち,適切な温度帯での1-MCP処理によりウメの収穫後果実の品質保持が期待できることが明らかとなった.
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