園芸学研究
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育種・遺伝資源
オタネニンジン‘かいしゅうさん’の組織培養技術の開発
関根 綾佐竹 大樹
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キーワード: 不定胚, 順化, 採種, 組織培養
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2024 年 23 巻 2 号 p. 91-98

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抄録

本県育成オタネニンジン品種‘かいしゅうさん’について,組織培養を用いて採種用株を作出し,原種を維持,増殖する技術を確立すること目的に試験を行った.供試材料については,1年生,2年生の未展開葉および展開葉小葉の先端側,基部側,小葉柄も供試した.その結果,不定胚形成数が最も多くなったのは1年生・展開済葉・小葉柄区であった.順化方法については,支持体をバーミキュライトとした液体培地下で無菌的に予備順化を行い,その後水耕栽培用ウレタンマットに培養個体を移植する水耕順化を行うことで生存率が8割程度と高くなった.水耕順化の期間中に落葉した個体にジベレリン酸を添加したところ,新葉が展開した個体が見られた.新葉のシュート長は落葉した葉のシュート長よりも大きくなり,形態も2年生に類似していたことから,落葉,新葉展開の過程をたどることで個体の株齢が進んだことが示唆された.加えて液体培地へのショ糖添加の効果を検討したところ,濃度に従って新葉展開数は増加した.予備順化,培土順化を行った培養苗をプランターに定植しパイプハウス下での生育を調査したところ,供試した4個体のうち2個体が生存していた.翌年にはこのうち1個体が開花,結実し7粒の種子を得ることができた.

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