カーネーション切り花の生産力強化を目的に養液土耕による養水分管理技術の開発,普及に取り組んだ.養液土耕は液肥混入機,タイマー(コントローラー),電磁弁など自動化されたシステムで点滴チューブと液肥を用いて灌水同時施肥する技術である.給液量および濃度はカーネーションの時期別養水分吸収特性からの検証により作成された給液管理マニュアルおよび土壌溶液診断に基づき決定する.本技術により少量高頻度で根圏に確実に養水分を供給することで,生育に好適な土壌溶液組成,濃度の維持が可能となり,その結果,高収量,高品質の切り花生産に結びつけることが可能となった.さらに養液土耕では灌水施肥作業の大幅な省力化(90%削減)となった.現在,兵庫県では生産者の7割に普及し,全国においても暖地作型産地を中心に導入が進んだ.養液土耕と同時に取り組んだ2年切り栽培においては,カーネーションの1年間栽培した株から発生している二次側枝を半分の本数ずつ1か月の間隔を空けて2回に分けて切り返すことで,夏季の高温時での切り返し後の株枯れを起こすことなく栽培できることを明らかにした.また,短茎多収栽培においては,切り花の収穫長を短くするほど切り花本数が増加し,カーネーションでは実需に応じた切り花の短茎化と多収が両立することが示唆された.国内シェアの66%(2022年)を輸入品が占める現在,さらなるカーネーション切り花の生産力強化に向けた技術開発,普及が望まれる.