園芸学研究
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育種・遺伝資源
常緑性ツツジの花器における見染性形質と二重咲き形質の同時発現について
郷原 優中務 明小林 伸雄
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2025 年 24 巻 1 号 p. 13-20

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抄録

ツツジ園芸品種に存在する見染性(花冠のがく片化)形質および二重咲き(がく片の花弁化)形質は,いずれもMADS-box Bクラス遺伝子のAP3およびPIへのトランスポゾン挿入(ap3ap3およびPI-HPI)が原因のホメオティック変異であり,それぞれの遺伝子変異を検出するDNAマーカーが開発されている.本研究では,見染性品種と二重咲き品種の交配系統を用いてDNAマーカーによる選抜と花器形態調査を行い,いずれもBクラス遺伝子変異に由来する見染性形質と二重咲き形質の同時発現の可能性を検討した.見染性品種と二重咲き品種を交配親に用いて得られた交雑個体において,PI-H変異アリルおよびap3ap3変異アリルを両方保有する個体は二重咲きと見染性の両形質を発現すると予想されたが,いずれも一重咲きの見染性を示した.これらの一部の個体ではがく片が花弁と同色に着色し,向軸側表皮細胞は正常花のがく片の細胞と比較して大きく,花弁の表皮細胞と類似した形状を示した.また,PI-H変異アリルを保有する個体はいずれも雌性不稔を示した.本研究の結果から,いずれもBクラス遺伝子が制御する見染性形質および二重咲き形質の同時発現は困難であることが示された.

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