2025 年 24 巻 2 号 p. 135-143
10品種のニホンナシを対象に,加糖れん乳を想起させる甘いミルキー感の強さについて分析型官能評価を実施した結果,‘はつまる’から最も強い評価値が知覚され,‘蒼月’,‘秋麗’がこれに続いた.官能評価と同一の果実から採取した汁液を分析し,果実ごとの香気成分のピーク強度とミルキー感の強さの単相関を算出すると,γ-decalactoneにおいて最大を示した.ミルキー感を呈した品種の搾汁液混合物から得た香気濃縮物について,段階的に希釈しながらGC-Oを実施したところ,64倍まで希釈した際に4人の評価者全員が検知できた成分はγ-decalactoneのみであり,そのにおいの特徴はミルキー,モモ様が挙げられ,育種担当者は‘秋麗’の香りを指摘した.これらから,‘秋麗’ × ‘甘太’後代に特徴的なミルキー感に単独で最も寄与する成分はγ-decalactoneと示唆された.また,育種担当者はdecanoic acidからも‘秋麗’の香りを検知した.これらから,両成分の組み合わせや相互作用により‘秋麗’後代品種に特有のミルキー感のある風味が形成されている可能性が示唆された.さらに,このミルキー感のある風味成分は‘秋麗’の種子親である‘筑水’に由来すると推定された.