カンキツ育種において,幼苗期におけるDNAマーカーでの雄性不稔性実生の選抜は効率よく無核性新品種を育種するために重要である.我々はキシュウミカン由来細胞質に起因する雄性不稔性に関与する核側の領域(MS-P1領域)を同定し,この領域は主に7つのハプロタイプ(HT1~HT7)に分類され,それらの組合せによって雄性不稔性が決まることを明らかにしてきた.この知見を利用し,本研究ではPCRとアガロースゲルのみでキシュウミカン由来細胞質を持つ交配集団において雄性不稔性実生を選抜できるDNAマーカーの開発を目的とした.MS-P1領域近傍のInDelを利用したマーカー(MS-P1 InDel)を用いることで,HT1はBアレル,HT2はAアレル,HT3,HT4,HT6,HT7はCアレル,HT5は増幅なしとして検出された.Aアレル,Bアレル,Cアレルはそれぞれアガロースゲル電気泳動で判別可能であった.3つの交配集団を用いた解析によって,MS-P1 InDelを利用することで高精度に雄性不稔性実生を選抜できることが示された.また,HT4由来MS-P1 InDel増幅配列特異的に存在していたSNPを利用したCAPSマーカー(MS-P1 InDel-CAPS)を用いることで,HT4を特異的に検出することができた.簡易にカンキツ実生からDNAを抽出する方法も開発したため,MS-P1 InDelとMS-P1 InDel-CAPSを組み合わせることでより簡易で高精度に雄性不稔性実生を選抜できることが期待される.