2026 年 25 巻 3 号 p. 147-154
本研究では,ブドウ‘シャインマスカット’における開花期前の花穂画像を用いて未開花症の有無を判定する深層学習モデルの構築を試みた.長野県および愛知県の圃場で撮影した花穂画像を,花蕾形態と開花後の観察に基づいて未開花症発生(P)または健常(N)にラベリングし,P,Nそれぞれ650枚,計1,300枚を学習用・検証用・試験用データセットに分割して供試した.まず,VGG16を用いて房全体を含むoriginal画像と,花穂先端約3~6 cmを切り出したtrimming画像をそれぞれ入力として学習し,画像領域の違いが識別性能に及ぼす影響を検討した.その結果,trimming画像モデルの試験用データ正答率は80.0%となり,original画像モデルの61.5%を上回るとともに,再現率および陰性的中率も大きく向上した.次に,trimming画像を入力としてVGG16,VGG19,MobileNet,DenseNet121およびInceptionV3の5アーキテクチャを比較したところ,DenseNet121およびInceptionV3において高い識別性能が得られ,試験用データ正答率はそれぞれ90.0%および86.5%であった.さらに両モデルについて学習条件を検討した結果,最適化手法にAdamを用い学習率0.0001としたInceptionV3モデルで試験用データ正答率92.0%が得られた.このモデルを用いて2025年に別途撮影した外部データセット(未開花症花穂18枚,健常花穂15枚)を評価したところ,未開花症花穂をすべて陽性と判定し,全体の正答率は約94%であった.以上より,花穂先端トリミング画像を入力とするInceptionV3ベースの深層学習モデルは,‘シャインマスカット’における未開花症の早期診断に有効な手法となる可能性が示された.