著者の聞き取り調査によれば,ガーベラの生産現場では,春から秋にかけて,1日目が曇雨天で2日目が晴天の場合,2日目の日中に花茎が曲がる現象が発生し,生産者はこの花茎曲がり発生を抑制するために長時間の遮光処理をするが,その発生原因は明らかにされていない.一方で,過度の遮光は光合成量の減少による生産性の低下を招く可能性がある.本研究では,ガーベラ栽培における生産性向上に寄与するため,花茎曲がりの発生実態およびその原因を明らかにした.まず,ガーベラ3品種に関して,1日目の天候および2日目の遮光処理の有無が花茎曲がりの発生に影響するか検証した(試験1).その結果として,1日目の天候,2日目の遮光処理の有無,品種の違いが花茎曲がりの発生に有意な影響があり,花茎曲がりは前日の天候が晴天よりも曇雨天で発生しやすく,かつ2日目に遮光をすることで抑制でき,また,発生のしやすさには品種間差があることを明らかにした.次に,1日目に強い遮光処理を実施して2日目は無遮光とすることで,花茎曲がりが発生しやすい環境条件を人為的に引き起こした区(S–NS区)と,2日とも無遮光の区(NS–NS区)を設定し,花茎の下垂度,水ポテンシャルの指標として,花茎部および葉部の圧ポテンシャル,株当たり蒸散量,花茎への水分流入量を調査した(試験2).葉部の圧ポテンシャルは両試験区とも6:00と12:00で大きな差はなかったが,花茎部の圧ポテンシャルは両試験区とも6:00は葉部の圧ポテンシャルよりも高かったが,12:00に大きく低下した.特にS–NS区は,2日目の12:00に花茎の圧ポテンシャルがNS–NS区と比較して有意に低下し,下垂度が有意に増加した.ただし,葉部の圧ポテンシャルは6:00も12:00も処理区間で有意な差はなかった.このとき,株当たりの蒸散量は,2日目は処理区間で同等であったのに対し,S–NS区の花茎への水分流入量(15分当たり)は,2日目において最大で0.20 g程度NS–NS区より低く推移した.重回帰分析により株当たりの蒸散量は,いずれの区でも1日目,2日目の屋内日射量が有意な影響を示した.一方で,花茎への水分流入量は,NS–NS区は1日目,2日目とも屋内日射量が有意な影響を示したが,S–NS区は2日目の屋内日射量の影響を受けなかった.このことから,葉部の蒸散は屋内日射量の急激な変化に適応できるが,花茎の水分流入量は花茎および花部の一時的な蒸散量の増加に対応できないため,水分損失が生じて花茎曲がりが発生したと推察された.花茎曲がりを防ぎながらできる限り日積算日射量を取り入れられる遮光技術や加湿方法を実現できれば,生産性の高いガーベラ栽培に寄与できると考えられる.