サトイモに対して病原性を持つ菌株‘F959’をサトイモ‘セレベス’に接種した.接種した球茎は25℃に温度調整した暗所に15日間維持した.球茎からパラフィン切片を作成し,光学顕微鏡を用いて細胞学的に観察した.その結果,対照区では,傷の表面に約1 mmの厚さの透明細胞層が形成され,その下に分裂細胞層が形成された.透明細胞層は著しく木化していた.一方,フザリウムを接種した場合,透明細胞層が2-5 mmの厚さに拡大し,木化は認められなかった.これはフザリウム菌によってゆ傷組織が正常に形成されなかったと考えられた.次に傷付けから接種までの時間を遅延させたときの球茎の反応を観察した.その結果,遅延が12時間以上のときには,透明細胞層の拡大はみられなくなった.これはサトイモ組織に何らかの生理的な防御反応が生じた結果,正常なゆ傷組織が形成可能になったためと考えられた.