抄録
世界各地から収集されたトウガラシ属栽培種5種145系統のカプサイシノイド含量をHPLCで定量分析し, 総含量と成分組成の種間および種内変異を解析した. C. annuumは‘シシトウ’なみの野菜用低含量系統を多く含み, 比較的低含量の範囲に分布した. C. chinenseとC. frutescensは全体的にC. annuumより高含量の系統が多かった. しかし, カプサイシノイドの検出されない系統から著しく高含量の系統まで幅広い変異を示し, 種々の程度の辛味を持つ品種を育成するための育種素材として有用と考えられた. C. baccatumにはC. annuumと同様に低含量の系統が多く, 野菜用品種育成の新しい育種素材としての可能性が考えられた. カプサイシノイドの成分組成を比較したところ, C. chinenseとC. frutescensはCAP>DCであるのに対し, C. pubescensではCAP<DCで, 明らかな種間差が認められた. C. annuumは他4種を包含する幅広い変異を示した. C. annuumにおいて成分組成の地域間差が認められ, 日本産系統にはCAP<DCの系統が特異的に多かった. カプサイシノイド含量と果実形態との関係を解析したところ, C. annuumとC. baccatumで果実の大きさとの間に有意な負の相関係数が得られた. しかし, カプサイシノイド生産部位である胎座の果実に占める割合が, 果実が大きくなるほど低下することに起因する表現型相関であり, 両形質は独立した遺伝的支配を受けていると考えられた.