抄録
ブドウ‘安芸クイーン’では, 果皮が深色化して品種特性の鮮赤色ではない暗赤色な果粒がしばしば出現する. 鮮赤色な適着色果房の生産性を向上させるために, 果色に着果量が及ぼす影響を調べた. 着色開始前の満開後32日に摘粒, 摘心および新梢基部の環状剥皮処理を行い, 1葉あたりの果粒数を0.14, 0.52, 1.53, 2.47の4段階に設定した. 0.14区と0.52区では, 果皮のアントシアニン総量は処理後, 著しく増加し, 満開後76日には深色化果粒が多く発生した. 一方, 1.53区では, アントシアニン生成が抑制され, 満開後96日に主に適着色果粒が生産された. 2.47区ではアントシアニンの生成が不十分であり着色不良となった. アントシアニン組成と果皮の深色化には明確な関係は認められなかった. 以上より, 着果量調整により果皮のアントシアニン生成を制御して適着色果粒を安定生産できると考えられた.