抄録
加温ビニルハウスまたは露地で生育したカキ‘前川次郎’について,満開後50日から収穫期までの果実肥大と気温との関係を解析した.平均気温は果実成長第I期にはハウス区が露地区より低かったが,第II期以降はハウス区の方が高く推移した.果実成長第I期の長さは,満開後の日数で表すとハウス区が露地区より長かったが,満開後の積算温度で表すと両処理区とも約2,300℃・日であり,積算温度と果径日増加量との間の関係は両処理区で近似する一次回帰式で表された.一方,果実成長第II~III期においては,ハウス区,露地区ともに,果径日増加量と平均気温との間に負の相関が認められ,関係が認められた時期の長さはハウス区の方が長かった.このことから,ハウス区では露地区に比べて,高温によって果実の肥大が抑制される期間が長いことが示された.