2007 年 6 巻 2 号 p. 189-193
ホウレンソウの低硝酸化を目的とした養液土耕技術確立のため,日射比例型給液制御によるポット栽培を行い,基礎的データを得ることを目的にした.
施肥量を一定とした場合,給液量の増加により生育は促進された.葉色は給液量の増加により薄くなった.可食部硝酸濃度は給液量の増加によって顕著に低下したが,栽培後期に下位葉が黄化した.そこで,給液量,施肥量ともに増加させたところ,予測吸水量,NO3-N吸収量の1.2倍程度を施肥することで,生育が促進された.対照区(予測量通りの給液,施肥)と1.2倍区では,葉色,可食部硝酸濃度について差がなかった.施与窒素利用率は,給液量,施肥量が増加するほど低くなったが,本試験の範囲内では,いずれの給水量,施肥量でも,90%前後と高かった.
以上の結果,給液量や硝酸施肥量を日射に応じて制御することで,ホウレンソウの低硝酸化や,高い施与窒素利用率による環境負荷軽減が可能であり,ホウレンソウの養液土耕における日射比例型制御の有効性が示唆された.