園芸学研究
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6 巻, 2 号
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総説
原著論文
育種・遺伝資源
  • 松永 啓, 矢ノ口 幸夫, 元木 悟, 岡本 潔, 村山 敏
    2007 年6 巻2 号 p. 177-181
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    ‘ピーマン中間母本農1号’は‘東京ピーマン’に発生した雄性不稔系統に‘ベルホマレ’の種子親系統の‘101(2・4)-11-1-4’を2回交雑した後代から選抜された雄性不稔性,疫病抵抗性及びToMV抵抗性を有する育種素材である.雄性不稔性は単因子劣性の核遺伝子型であり,疫病抵抗性は不完全優性の極く少数の因子に支配されていると推定される.本系統の利用によりピーマンF1品種の採種効率を向上させることができるので,青果用および台木用F1品種の種子親系統としての利用が期待される.
  • 大久保 直美, 鈴木 一典, 近藤 雅俊, 谷川 奈津, 中山 真義, 柴田 道夫
    2007 年6 巻2 号 p. 183-187
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    沖縄産ヒメサザンカ野生種13系統,芳香性ツバキの花粉親の一つであるヒメサザンカの系統1118(海外経由系統),芳香性ツバキ4品種の香気成分の比較を行った.ヒメサザンカの香気成分について,新たにリモネンおよび6種の芳香族化合物,安息香酸ベンジル,オイゲノール,サリチル酸メチル,o-アニス酸メチル,フェニルアセトアルデヒド,ベンズアルデヒドを同定した.沖縄産野生種13系統の香気成分量は,ほとんどのものが海外経由系統より多く,特に系統3と36が多かった.この二つを比較すると,花様の香調の2-フェニルエタノールやフェニルアセトアルデヒドの割合が多い系統36の香りの方が強く感じられた.ヒメサザンカを花粉親とする芳香性ツバキ‘姫の香’,‘港の曙’,‘春風’,‘フレグラントピンク’の香気成分の組成もヒメサザンカとほぼ同じであったが,組成比は品種ごとに大きく異なり,花様の香調を持つ成分の割合の多い‘姫の香’,‘港の曙’で香りが強く感じられた.
土壌管理・施肥・灌水
  • 篠原 温, 塚越 覚, 林 菜穂子, 丸尾 達, 北条 雅章
    2007 年6 巻2 号 p. 189-193
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    ホウレンソウの低硝酸化を目的とした養液土耕技術確立のため,日射比例型給液制御によるポット栽培を行い,基礎的データを得ることを目的にした.
    施肥量を一定とした場合,給液量の増加により生育は促進された.葉色は給液量の増加により薄くなった.可食部硝酸濃度は給液量の増加によって顕著に低下したが,栽培後期に下位葉が黄化した.そこで,給液量,施肥量ともに増加させたところ,予測吸水量,NO3-N吸収量の1.2倍程度を施肥することで,生育が促進された.対照区(予測量通りの給液,施肥)と1.2倍区では,葉色,可食部硝酸濃度について差がなかった.施与窒素利用率は,給液量,施肥量が増加するほど低くなったが,本試験の範囲内では,いずれの給水量,施肥量でも,90%前後と高かった.
    以上の結果,給液量や硝酸施肥量を日射に応じて制御することで,ホウレンソウの低硝酸化や,高い施与窒素利用率による環境負荷軽減が可能であり,ホウレンソウの養液土耕における日射比例型制御の有効性が示唆された.
  • 篠原 温, 塚越 覚, 林 菜穂子, 丸尾 達, 北条 雅章
    2007 年6 巻2 号 p. 195-199
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    養液土耕と日射比例型給液制御を組み合わせてホウレンソウを実際栽培規模で栽培し,生育・外観,硝酸濃度,肥料利用効率などに及ぼす影響を調査した.
    養液栽培によるホウレンソウの吸水量およびNO3-N吸収量実測値から得た,日射あたり予測吸水量,NO3-N吸収量の1.2倍程度を給液,硝酸施与することで,生育・外観は慣行の土耕と変わらなかった.1.2倍給液,NO3-N施与の時,総施与量は土耕の約2分の1,肥料利用効率は80%以上となり,顕著な節肥効果が認められた.可食部硝酸濃度は,養液土耕により,土耕に比べて低下する傾向が認められた.また養液土耕では,収穫前数日間の施肥停止処理により,生育・外観に影響を与えず,硝酸濃度をさらに低下できる可能性が示唆された.
栽培管理・作型
  • 羽山 裕子, 藤丸 治, 岩谷 章生, 伊東 明子, 阪本 大輔, 岡田 眞治, 樫村 芳記
    2007 年6 巻2 号 p. 201-207
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    果実発育期間中の気温がモモ果実の発育に及ぼす影響を解析するため,気象条件の異なる熊本と茨城に栽植されたモモ‘あかつき’を用いて果実の発育や成熟に関わる様々な形質の変化を3か年(2003~2005年)にわたり調査した.果実発育期間(満開日から収穫盛日までの期間)の平均気温は,熊本が茨城に比べて1~2℃高かった.一方,成熟期(収穫盛日前4週間)の気温は,地域および年次間差が大きく,最も高かった2004年の熊本では25.7℃,最も低かった2003年の茨城では20.9℃であった.果実発育期間の日数は,地域により大きく異なり熊本が茨城よりも5~14日短かった.硬核開始日はいずれの年も熊本が茨城よりも早かった.一方,硬核開始から収穫盛日までの日数は,地域や年次に関係なくほぼ一定であった.したがって,果実発育期間中の気温の上昇は満開日から硬核開始日までの日数を短縮するが,硬核期以降の果実発育にはほとんど影響を及ぼさないものと考えられた.また,成熟にともなう果実肥大,果肉硬度および果皮の地色の変化についても収穫盛日を基準にすると年次や地域に関係なくほぼ一定の傾向を示し,気温の影響はほとんど受けないと考えられた.収穫後の日持ち性についても果肉硬度を揃えて収穫した場合,果実発育期間の気温による影響は認められなかった.
  • 稲葉 幸雄, 家中 達広, 畠山 昭嗣, 吉田 智彦
    2007 年6 巻2 号 p. 209-215
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    夜冷短日処理によって8月上旬に頂花房を分化させた苗に対して,継続して夜冷処理を行なうことで頂花房の花芽発育と一次側花房の花芽分化を同時に促進させる育苗法を検討した.頂花房分化後に8日~10日の夜冷処理中断期間を設けることで,栄養成長が促進され頂花房着花数が増加した.また夜冷処理中に追肥を行うことで一次側花房の花芽分化が促進されることが明らかとなった.本処理方法で一次側花房を分化させた苗を9月上旬に定植することによって,10月上中旬から頂花房の収穫が可能となり,一次側花房も頂花房に引き続き連続的に収穫できることから年内収量が大幅に増加することが明らかとなった.
  • 安 東赫, 池田 英男
    2007 年6 巻2 号 p. 217-221
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    ニラの刈り取り後の生育特性や炭水化物の分配を詳細に理解するために,ニラを砂耕して,葉,底盤部,鱗茎および根に分け,刈り取り後20日間の器官別の重量と糖含量の変化を調べた.
    植物体乾物重は刈り取り12日後まで減り続け,その後,増加したが,葉の長さが40 cmを超えて刈り取り可能となった20日後でも,刈り取り時の80%程度であった.特に根の乾物重は刈り取り後減少を続け,20日後には刈り取り時の約50%になり,ニラの根は炭水化物の貯蔵器官としての役割が大きいことが示された.
    葉ではフルクトースが,その他の器官ではスクロースが多かった.スクロースは底盤部で特に多かったが,刈り取り4日後にはいずれの器官でも濃度が大きく低下した.植物体のアルコール可溶性糖含量は,刈り取り4日後で最少となり,その後,葉の伸長とともに増加して,刈り取り20日後には刈り取り時の含量を上回った.一方,多糖類含量は刈り取り8日後まで減り続け,その後はあまり変化しなかった.植物体の全炭水化物(糖類)含量は刈り取り8日後に最少(刈り取り時の60%)となって,20日後でも刈り取り時の72%までしか回復しなかった.
  • 権田 かおり, 山口 秀幸, 丸尾 達, 篠原 温
    2007 年6 巻2 号 p. 223-227
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    IおよびIO3を添加した培養液を用いた養液栽培で,トマトとホウレンソウを栽培し,ヨウ素が植物の生育に及ぼす影響および植物体中のヨウ素濃度を調査した.I処理により,トマトでは養水分吸収量がわずかに低下したが,生育には有意な影響は見られなかった.ホウレンソウでは養水分吸収量が著しく低下し,葉数および生体重の低下が見られたことから,植物によってヨウ素の感受性が異なると考えられた.養液栽培においてヨウ素を殺菌剤として用いるためには,栽培植物の種類に対応した処理方法を検討する必要があると考えられた.植物体中のヨウ素濃度は,トマト,ホウレンソウともに葉身部で他の部位に比べて高くなっていたが,トマトでは果実中にもヨウ素が蓄積されていた.よって,ホウレンソウ,トマトともに適切な濃度のヨウ素処理を行うことにより,ヨウ素富化食品としての利用が可能であると考えられた.
  • 本間 英治, 宍戸 麻依子, 平 智
    2007 年6 巻2 号 p. 229-232
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    ヤマブドウ果実の安定生産技術の確立に関する基礎的知見を得るため,雌株と雄株の開花パターンを調査するとともに,雄株花粉を用いた人工受粉の時期と回数が結実率と収穫時の果実品質に及ぼす影響を調査した.また,ブドウ栽培品種の花粉を用いた場合の人工受粉の効果をヤマブドウ花粉と比較した.
    ヤマブドウの開花期間は雌株が10日,雄株が9日であった.結実率は開花の前期(開花始期後2日)と後期(開花始期後5日)の2回人工受粉した場合が最も高かった(54.5%).1回のみ人工受粉する場合は,結実率は後期受粉(46.2%)が前期受粉(24.0%)よりも高かった.収穫時の果汁の屈折計示度は,後期受粉が前期受粉より高い傾向が認められた.
    栽培品種の‘マスカット・オブ・アレキサンドリア’の花粉(発芽率18.4%を3倍希釈)と‘グローコールマン’の花粉(発芽率6.1%)を人工受粉した場合の結実率はそれぞれ47.9%および33.3%で大差が認められたが,生理的活性の高い花粉を確保できればヤマブドウ人工受粉の花粉源として利用可能であると考えられた.
  • 山根 崇嘉, 柴山 勝利
    2007 年6 巻2 号 p. 233-239
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    ブドウ‘安芸クイーン’の結果枝を用いて,環状はく皮処理の時期,幅および果粒数が果皮の着色に及ぼす影響を検討した.実験1として満開後13日および30日に1果房あたりの果粒数を13,32および50粒とし,環状はく皮を処理した.環状はく皮の影響は果粒数が少ない場合に強く現れ,満開後13日処理で果粒肥大,糖およびアントシアニンの蓄積が促進され,満開後30日処理ではアントシアニンと糖の蓄積が促進された.アントシアニンの蓄積は満開後30日処理が同13日処理よりも大きかった.実験2として満開後35,42,49,56および63日に,はく皮幅3,5,10および20 mmの環状はく皮処理を行った.その結果いずれのはく皮幅においても,アントシアニンおよび糖の蓄積は満開後35日処理で最も大きかった.一方,はく皮幅の違いによる差は小さかった.環状はく皮による着色向上は着色開始時点での糖の蓄積を伴っており,満開後30日からの糖の蓄積がその後のアントシアニンの蓄積に重要な役割を果たしていると考えられる.以上のことから,着色向上に対する環状はく皮の効果は着果負担を軽減した場合に大きく,また,処理幅よりも処理時期により大きな影響を受け,満開後30および35日処理が着色改善効果が大きかった.
  • 村山 徹, 箭田 浩士, 宮沢 佳恵
    2007 年6 巻2 号 p. 241-245
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    コシアブラ若芽の抗酸化活性をβ-カロテン退色法とDPPHラジカル消去活性で評価したところ,高い活性を示した.主たる抗酸化成分は,クロロゲン酸と同定された.グロースチャンバー試験で,その成分含量に影響する要因を検討したところ,光が強く,穂木が長いと含量が高まることが示された.その結果に基づいて,好適な促成栽培技術を確立するため,ガラス室内で栽培条件が収量と抗酸化成分含量に及ぼす影響を検討した.促成栽培では,10~15℃の水に30~40 cmの穂木を挿すことによって,クロロゲン酸含量の多い若芽を収穫できた.
  • 飛川 光治
    2007 年6 巻2 号 p. 247-250
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    ナスの促成栽培における日中加温の効果について検討した.試験はビニルハウス内に小型ハウスを設置し,各々の小型ハウスを電熱ヒーターによって異なる最低昼温に日中加温して行った.その結果,日中加温によって最低昼温を25℃以上で栽培すると12~2月の稔性花粉重が増加し,正常果収量も増加した.また,その際の加温時間は正午前後の3時間のみでも,8:00~17:00の9時間加温した場合と同様の効果があると考えられた.
  • 新川 猛, 鈴木 哲也, 尾関 健, 加藤 雅也, 生駒 吉識
    2007 年6 巻2 号 p. 251-256
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    カキ‘富有’を用いて,成熟に伴うカロテノイド蓄積と生合成に関与するphytoene synthase(DK-PSY),phytoene desaturase(DK-PDS),ζ-carotene desaturase(DK-ZDS),lycopene β-cyclase(DK-LCYb),β-ring hydroxylase(DK-HYb),zeaxanthin epoxidase(DK-ZEP),lycopene ε-cyclase(DK-LCYe)の発現の特徴について明らかにした.果皮では,緑色期の主要なカロテノイドはルテインであった.これはDK-LCYeの遺伝子発現が全期間ほぼ一定に推移したのに対して,他の遺伝子は緑色期では最も低い発現レベルであったため,緑色期のLCYeの役割が着色期に比べて相対的に大きくなり緑色期のルテインの蓄積に関与したためと考えられた.着色が始まる10月以降には,β-CRYならびにゼアキサンチンが蓄積した.これはDK-LCYe以外の遺伝子発現の一斉上昇により,キサントフィル類が蓄積しやすい遺伝子発現パターンに変化したためと考えられた.果肉では,10月にβ-CRYならびにゼアキサンチンが蓄積し,11月にはリコペンが蓄積した.11月のリコペンの蓄積は,リコペン生合成より上流に位置するDK-PSY,DK-PDS,DK-ZDSの急激な発現上昇によるものと考えられた.
  • 杉浦 俊彦, 黒田 治之, 杉浦 裕義
    2007 年6 巻2 号 p. 257-263
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    温暖化がわが国の果樹に及ぼす影響について網羅的に把握することを目的として,全国の果樹関係公立試験研究機関に対して調査を行った.
    すべての都道府県が,温暖化の影響の発生について何らかの指摘をし,また,ほとんどの樹種に及んでいた.温暖化の影響は大きく2タイプに分類できた.ニホンナシ,モモ,ウメなどでは,開花期と成熟期がともに前進する,果実生育期前進タイプである.リンゴ,カキ,ブドウ,ウンシュウミカンなどは,開花期が前進する一方で,必ずしも成熟期は前進しない,果実生育期延長タイプである.後者では,着色不良,大玉化,低酸化,果肉軟化,貯蔵性低下等果実品質に関する変化が顕著であった.
    気象災害のうち凍害は常緑果樹やイチジクでは減少,その他の樹種では増加の指摘が多かった.晩霜害は地域により増加と減少の双方の指摘があった.
  • 千々和 浩幸, 林 公彦
    2007 年6 巻2 号 p. 265-270
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    カキ‘西村早生’は,樹齢の進行や樹勢の低下に伴い雌花の着生数が少なくなり,収量の低下がみられるようになる.そこで,徒長枝を摘心することで夏枝の発生を促し,翌年の結果母枝として利用できないか検討した.その結果,徒長枝を5~6月に摘心して発生した夏枝には,雌花が多く着生した.また,摘心後に夏枝が発生しなかった春枝にも慣行の結果母枝と同程度の雌花が着生した.一方,雄花数は春枝,夏枝ともに慣行の結果母枝よりも少なかった.夏枝,春枝ともに着花数には摘心時期の違いによる差はみられなかったが,5月上旬に摘心した区で夏枝発生率が高くなった.また,徒長枝を摘心して育成した結果母枝に結果した果実の品質は,慣行の結果母枝と比較して違いがみられなかった.
    以上のことから,‘西村早生’では徒長枝を5~6月に摘心することで,翌年の雌花確保のための結果母枝として利用できることが明らかとなった.
発育制御
  • 北村 八祥, 中山 真義, 近藤 宏哉, 西川 豊, 腰岡 政二, 平塚 伸
    2007 年6 巻2 号 p. 271-275
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    ブドウ‘安芸クイーン’における着色の問題には,着色不良だけでなく果皮が暗赤色となる深色化現象がある.本研究では,‘安芸クイーン’の着色に及ぼすアブシジン酸(ABA)処理の影響を,着色促進と深色化の両面から検討した.満開後54(ベレゾーン),63および72日後に1,000 ppmのABA水溶液を有核果房に散布した.54日処理区では,処理の効果はほとんど認められなかった.63および72日処理によってアントシアニン総量が高まり,適着色果粒が増加したが,深色化果粒も多く発生した.また,全処理区で,同一果房中の果粒の着色が不均一なことが示された.果皮のアントシアニン組成,果汁の糖度,有機酸含量,果房重および平均果粒重には,処理間で差が認められなかった.
  • 林 利夫, 鈴木 忠幸, 古在 豊樹
    2007 年6 巻2 号 p. 277-281
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    1. 閉鎖型苗生産システムを用いた環境制御条件下のトマトセル育苗期に高級脂肪族アルコール製剤の影響を検討した結果,明確な地下部乾物重量の増大が認められた.地上部乾物重量,茎径,茎長,葉面積,葉中クロロフィル含量および純光合成速度に関しては,対照区と同等であった.
    2. 本葉展開1~2枚の時期から第1花房開花時期までの期間,高級脂肪族アルコール製剤を経時的に処理した結果,地上部および地下部重量が有意に増大した.高級脂肪族アルコール製剤処理区では,葉中クロロフィル含量は変化せず,純光合成速度の増大が認められた.
  • 相川 敏之, 西沢 隆, 伊藤 政憲, 冨樫 政博, 山崎 紀子
    2007 年6 巻2 号 p. 283-287
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    メロン‘アンデス’を遮光ないし無遮光条件下で育て,果実のエチレン生成量と「水浸状果」発症との関係を調べた.
    1. 遮光区では,収穫適期以前における果実のエチレン生成量の増加と果肉の軟化が,無遮光区より顕著に現れたが,「水浸状果」は収穫適期以降でのみ発症した.
    2. 収穫適期に発症する「水浸状果」は,無遮光区より遮光区でより顕著に増加したが,一部の果実では無遮光区でも発症した.また,無遮光区では,過熟期になっても「水浸状果」の発症率は上昇しなかった.
    3. 無遮光区では,過熟期における「正常果」の果肉硬度やエチレン生成量は,収穫適期における遮光区の「水浸状果」と同程度の値を示した.
    本実験の結果から,メロン‘アンデス’果実における「水浸状果」の発症には,収穫適期以降に認められる高いエチレン生成は必要なく,遮光処理によって生じた,成熟初期のエチレン生成の増加が重要な役割を持っていると考えられた.
収穫後の貯蔵・流通
  • 宮前 治加, 伊藤 吉成, 神藤 宏
    2007 年6 巻2 号 p. 289-294
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    シュッコンカスミソウ切り花の適切な輸送条件を明らかにするため,輸送時間,輸送温度および乾式と湿式という2種類の輸送方法が切り花の品質保持に及ぼす影響を検討した.
    湿式輸送では,20℃,72時間の常温長時間の輸送で,輸送中に著しい切り花重の増加と開花の進行が認められたが,輸送中に萎凋花は発生しなかった.一方,乾式輸送では,10℃,24時間の低温短時間の輸送でも輸送中に切り花重が10%程度減少し,輸送直後の鮮度は低下した.
    切り花の花持ちは輸送温度と輸送時間の影響を受け,輸送時間が長く,輸送温度が高いほど花持ち日数は短縮し,同じ輸送条件であれば,湿式輸送は乾式輸送より花持ちが優れた.特に,20℃で48時間以上の乾式輸送では花持ち日数は著しく短縮した.
    以上の結果,湿式輸送は乾式輸送に比べて切り花の品質を保持しながら輸送できることが確認された.特に輸送温度が20℃下での輸送においても乾式輸送ほど著しい花持ち低下は認められなかった.
  • 知野 秀次, 松本 辰也, 児島 清秀
    2007 年6 巻2 号 p. 295-299
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    収穫後に低温(5℃・7日間)またはエチレン(5000 ppm・24時間)処理したセイヨウナシ‘ル レクチエ’の果実において,外気温で追熟させた時の果実の果皮色(赤道部およびていあ部),果肉硬度,可溶性固形物濃度およびエチレン生成量の変化を測定した.果実を追熟させた時,低温またはエチレン処理区の可食果の割合は,処理後35日に100%に到達した.両処理区の果実からのエチレン生成量は,処理後14日から増加し,処理後35日に最大に達した.エチレン処理区の赤道部およびていあ部の果色値は,処理後49および56日に低温処理区の果実より有意に高かった.両処理区において,果実が可食適期に達した時の赤道部の果色値は5.0以上であった.低温およびエチレン処理区で果色値が同じ時,果肉硬度は異なった.
  • 湯本 弘子, 市村 一雄
    2007 年6 巻2 号 p. 301-305
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    トルコギキョウ切り花ではスクロースの前処理が花持ち延長に有効であるが,葉への障害発生が認められることがある.障害の発生要因を調査するために,開花小花3個,つぼみ3個に調整した‘ミラコーラル’切り花を,DW,2%および4%スクロース処理液に挿し,23℃,相対湿度(RH)53%,71%および86%の暗黒条件下で24時間吸液処理を行った.
    53%RH・4%スクロース処理で100%の,71%RH・4%スクロース処理で50%の切り花で葉に障害の発生がみられた.それ以外の処理では障害の発生はみられなかった.前処理溶液の吸収量は処理時の相対湿度の影響を非常に強く受け,いずれの前処理液においても低湿度ほど処理液の吸収量は増加した.また,スクロース吸収量はいずれの相対湿度条件下においても4%スクロース処理が2%スクロース処理を上回った.花持ち日数は処理時の相対湿度の影響はほとんど受けず,処理時のスクロース濃度の影響を強く受け,スクロース濃度が高いほど花持ちは延長した.以上の結果から,トルコギキョウ切り花において,前処理時のスクロース濃度が高いほど花持ち延長に有効だが,処理時間内に高濃度のスクロース処理液を多量に吸収すると,スクロース吸収量が過剰になり葉に障害が発生すると考えられた.
普及・教育・利用
  • 藤井 雄一郎, 大塚 雅子, 岡本 五郎, 日原 誠介, 各務 裕史
    2007 年6 巻2 号 p. 307-311
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    放射線育種により作出されたモモ‘清水白桃RS’は,原品種の‘清水白桃’と比較して果実品質は同等であるが,結実率が低い.開花30日後の結実率を調査したところ,‘清水白桃’が平年では50~70%であるのに対し,‘清水白桃RS’は20~30%と著しく低かった.花器の形態的観察を行ったところ,‘清水白桃RS’には胚珠や胚のうの未発達や退化など形態的異常の花が多く存在しており,これが結実率の低下を引き起こしていると考えられた.また,‘清水白桃RS’は葯当たりの正常花粉数が少なく,このことが受粉の効率を低下させ受精率を低下させているとも考えられた.しかし,結実率の低さが生産性の低下につながることはなく,3~5月にかけての摘蕾・摘果労力の大幅な低減につながる省力品種であることが確認された.
解説
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