抄録
トマトの果実肥大期が栄養成長期と比較して湿害を受けやすい原因を明らかにするため,乾物重,新規固定炭素の分配と出液速度について調査した.栄養成長期と果実肥大期のトマト地上部全体に5時間13CO2を同化させ,同化終了直後から43時間湛水処理を行った.湛水区の新規同化産物の根への分配は,両時期とも対照区と同程度であったが,栄養成長期の9%と比べて果実肥大期では2%と非常に少なかった.出液速度は両時期とも湛水処理により低下した.根重当たりの出液速度は栄養成長期よりも果実肥大期で低い値となった.果実肥大期で栄養成長期と比較して湿害の程度が大きいのは,根への同化産物の転流割合が相対的に低いステージであることと,根の生理活性の低下程度が大きいことに起因すると考えられた.