2008 年 7 巻 3 号 p. 359-366
無剪定の矮性および半矮性台木利用リンゴ樹(樹齢11~13年生)を供試し,純生産率(NPR: t DW・t−1 DW・y−1)に及ぼす栽植密度の影響について検討した.果実NPR(Fd/Ld)と全NPR(⊿Pn/Ld)は,各台木樹とも栽植密度(ρ)の増加に伴って減少したが,枝,幹および根のNPR(⊿Pb/Ld,⊿Pt/Ldおよび⊿Pr/Ld)は増加した.Fd/Ld,Z/Ld(Zは⊿Pb,⊿Ptあるいは⊿Prを示す)および⊿Pn/Ldに関する密度効果は,それぞれFd/Ld = K1 exp (−k1ρ),1/(Z/Ld) = A3 + B3/ρおよび⊿Pn/Ld = K2ρ−k2で表された.果実NPR(Fd/Ld)と全NPR(⊿Pn/Ld)あるいは果実への分配率(Fd/⊿Pn)との関係は,それぞれ⊿Pn/Ld = 0.66(Fd/Ld) + 2.8とFd/⊿Pn = 0.2(Fd/Ld) + 0.07で表された.また,果実NPRと栄養体の純生産量あるいは栄養体への分配率との間には,それぞれ負の有意な相関が認められた.栄養体のNPR,栄養体の純生産量,栄養体への分配率の三者の間には,正の有意な相関が認められた.全NPR(⊿Pn/Ld)と葉量(Ld)の関係は,⊿Pn/Ld = 5.4 exp (−0.08Ld)で表された.果実生産量(Fd)と葉量(Ld)あるいは果実NPR(Fd/Ld)の関係は,それぞれFd = −a1(Ld)2 + b1(Ld) + c1とFd = −a2(Fd/Ld)2 + b2(Fd/Ld) + c2で表された.果実生産量(Fd)と葉量/果実NPR(Ld/(Fd/Ld))のlog~log関係を見ると,Fdは各台木樹ともLd/(Fd/Ld)の増加に伴って増加し,あるLd/(Fd/Ld)(最適Ld/(Fd/Ld))で最大に達することが示された.このlog Fd~log Ld/(Fd/Ld)関係は,log Fd~log ρ関係およびlog Fd~log ⊿Pn/(Fd/⊿Pn)関係と一致し,またρ,Ld/(Fd/Ld),⊿Pn/(Fd/⊿Pn)の三者の間には,正の有意な相関が認められた.以上の結果から,果実生産量に関する密度効果は,栽植密度の変化→Ld/(Fd/Ld)の変化→⊿Pn/(Fd/⊿Pn)の変化→果実生産量の変化という一連の因果性をもった現象と考えられる.