リンゴ樹における新梢成長と貯蔵養分の利用との関係を知るために,前年度に
15Nと
13Cを施与したリンゴ‘ふじ/マルバカイドウ’の1年生樹に切り返し剪定を行い,その後の新梢成長と貯蔵養分の移行について,成長初期(5月),成長旺盛期(6月),成長停止期(9月)に調査した.5月までは新梢の位置に関係なく,個々の新梢長の差は小さかったが,6月には上部の新梢が長くなり,それからその差が顕著になった.新梢長と新梢の
15N excess%との間には相関は認められなかったが,
15N excess%は9月に顕著に減少した.新梢長と新梢の
13C excess%との間には低い負の相関が認められ,5月から6月にかけて大きく減少した.新梢長と
15N分配率(%)および
13C分配率(%)の間には,5月から9月において有意な正の相関が認められた.これらのことから,上部の長く伸びる枝は,貯蔵された窒素あるいは炭素を相対的により多く利用していることが推察された.そして長い枝と短い枝では貯蔵養分と当年に吸収された養分の利用の度合いには差が無いが,特に,新梢成長には貯蔵された窒素の寄与が炭素に比べてより大きいことが推察された.
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