園芸学研究
Online ISSN : 1880-3571
Print ISSN : 1347-2658
ISSN-L : 1347-2658
7 巻, 3 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
原著論文
育種・遺伝資源
土壌管理・施肥・灌水
  • 加藤 一幾, 植田 稔宏, 松本 英一
    2008 年 7 巻 3 号 p. 345-350
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    黒ボク土地域の施設栽培において,コマツナ‘夏楽天’の3作連続栽培試験(夏作①,夏作②,秋作)を行い,施肥前土壌中(深さ0~15 cm)の硝酸態窒素量を基準量からさし引いた窒素診断施肥を行い,高温期の可食部硝酸イオン濃度を低減することを目的とした.夏作の可食部硝酸イオン濃度は標準区(N7 kg・10 a−1)と診断施肥区(診断N7,診断N5 kg・10 a1)の間にはほとんど差がなく,診断施肥による低減効果はほとんどなかったが,秋作では診断施肥による低減効果が顕著にあらわれた.一方,窒素を施肥しない無窒素区では全ての栽培季節で著しい低減効果が認められた.また,夏作②の無窒素区では栽培期間を5日間延長することで標準区と同等の収量を得ることができた.土壌から無機化した推定窒素量は夏作におけるコマツナの窒素同化量を上回った.以上のことから高温期のコマツナ施設栽培では,より詳細に植物の窒素同化量を推定することで,収穫までに必須な窒素量を明らかにし,土壌からの無機化窒素量を考慮した診断施肥の窒素基準量を設定することで,収量を維持しつつ可食部硝酸イオン濃度をさらに低減できると考えられた.
  • 山本 隆儀, 奥谷 紘平, 田中 宏幸, 川上 晃, 金本 明洋
    2008 年 7 巻 3 号 p. 351-358
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    オウトウ樹の根圏土壌表面に不織布シートを敷き,土壌の一定の深さまでビニルフィルムを縦に張り巡らすことで,根圏土壌への雨水を遮断し(以下,マルチ処理区),裂果発生率とともに,土壌水分,樹体の水分状態,葉形質,果実の肥大成長および果実品質に及ぼす影響を調査し,露地栽培(以下,対照区)および雨よけテント栽培(以下,雨よけテント区)と比較した.その結果,マルチ処理区の裂果発生率および裂果程度は対照区に比較して大きく低下した.また,樹上散水処理によるマルチ処理区の裂果発生は対照区に比べ著しく抑えられた.土壌水分(土壌水分張力および含水比),各器官水ポテンシャルおよび葉からの蒸散速度を調査した結果,マルチ処理区において乾燥ストレス状態が維持されていることが確認された.果実成長第3期後半におけるマルチ処理区の果実横径は他の2区よりも有意に小さかった.この期間における果実の膨張・収縮過程をギャップセンサ法により調査したところ,対照区の果実はこの期間を通してほぼ連続的に膨張したが,マルチ処理区の果実は収縮と膨張を頻繁に繰り返した.雨よけテント区に見られた陰葉化現象と果実の着色不良は対照区と同様にマルチ処理区には見られなかった.
栽培管理・作型
  • 黒田 治之, 千葉 和彦
    2008 年 7 巻 3 号 p. 359-366
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    無剪定の矮性および半矮性台木利用リンゴ樹(樹齢11~13年生)を供試し,純生産率(NPR: t DW・t−1 DW・y1)に及ぼす栽植密度の影響について検討した.果実NPR(Fd/Ld)と全NPR(⊿Pn/Ld)は,各台木樹とも栽植密度(ρ)の増加に伴って減少したが,枝,幹および根のNPR(⊿Pb/Ld,⊿Pt/Ldおよび⊿Pr/Ld)は増加した.Fd/Ld,Z/Ld(Zは⊿Pb,⊿Ptあるいは⊿Prを示す)および⊿Pn/Ldに関する密度効果は,それぞれFd/Ld = K1 exp (−k1ρ),1/(Z/Ld) = A3 + B3/ρおよび⊿Pn/Ld = K2ρk2で表された.果実NPR(Fd/Ld)と全NPR(⊿Pn/Ld)あるいは果実への分配率(Fd/⊿Pn)との関係は,それぞれ⊿Pn/Ld = 0.66(Fd/Ld) + 2.8とFd/⊿Pn = 0.2(Fd/Ld) + 0.07で表された.また,果実NPRと栄養体の純生産量あるいは栄養体への分配率との間には,それぞれ負の有意な相関が認められた.栄養体のNPR,栄養体の純生産量,栄養体への分配率の三者の間には,正の有意な相関が認められた.全NPR(⊿Pn/Ld)と葉量(Ld)の関係は,⊿Pn/Ld = 5.4 exp (−0.08Ld)で表された.果実生産量(Fd)と葉量(Ld)あるいは果実NPR(Fd/Ld)の関係は,それぞれFd = −a1(Ld)2 + b1(Ld) + c1とFd = −a2(Fd/Ld)2 + b2(Fd/Ld) + c2で表された.果実生産量(Fd)と葉量/果実NPR(Ld/(Fd/Ld))のlog~log関係を見ると,Fdは各台木樹ともLd/(Fd/Ld)の増加に伴って増加し,あるLd/(Fd/Ld)(最適Ld/(Fd/Ld))で最大に達することが示された.このlog Fd~log Ld/(Fd/Ld)関係は,log Fd~log ρ関係およびlog Fd~log ⊿Pn/(Fd/⊿Pn)関係と一致し,またρ,Ld/(Fd/Ld),⊿Pn/(Fd/⊿Pn)の三者の間には,正の有意な相関が認められた.以上の結果から,果実生産量に関する密度効果は,栽植密度の変化→Ld/(Fd/Ld)の変化→⊿Pn/(Fd/⊿Pn)の変化→果実生産量の変化という一連の因果性をもった現象と考えられる.
  • 高田 大輔, 福田 文夫, 久保田 尚浩
    2008 年 7 巻 3 号 p. 367-373
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    4年間にわたり,弱剪定・強摘蕾(弱剪定栽培)と強剪定・無摘蕾(慣行栽培)の異なる2つの栽培管理方法がモモ‘紅清水’の赤肉果発生と果実発育に及ぼす影響を調査した.栽培年次に関係なく,慣行栽培樹ではいずれの樹もほとんど赤肉果が発生しなかったのに対し,弱剪定栽培樹では赤肉果が多発した.弱剪定栽培樹の収量は慣行栽培樹よりも多かった.果実発育初期の果肉の窒素含量は,慣行栽培樹よりも弱剪定栽培樹で少なかった.弱剪定栽培樹と慣行栽培樹の枝と根における開花前後の炭水化物含量を比較したところ,前者では後者よりも発芽後の減少程度が大きかった.弱剪定栽培樹では慣行栽培樹よりも果実発育期間を通して果肉細胞径が大きく,また果実発育第3期の果実肥大が大きく,このため収穫時の果実重も前者で優れた.収穫果の糖度は,弱剪定栽培樹が慣行栽培樹よりも有意に高かった.新梢伸長は,弱剪定栽培樹では果実発育第2期初めにほぼ停止したのに対し,慣行栽培樹では果実発育第3期まで続いた.弱剪定栽培樹では果肉のアントシアニン含量が成熟直前から急増した.果肉の全フェノール含量は果実発育期間を通して弱剪定栽培樹が慣行栽培樹よりも多く,PAL活性も前者で高かった.これらの結果をもとに,モモの赤肉果発生と果実発育との関係を考察した.
  • 徐 剣波, 荒川 修, 浅田 武典
    2008 年 7 巻 3 号 p. 375-380
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    リンゴ樹における新梢成長と貯蔵養分の利用との関係を知るために,前年度に15Nと13Cを施与したリンゴ‘ふじ/マルバカイドウ’の1年生樹に切り返し剪定を行い,その後の新梢成長と貯蔵養分の移行について,成長初期(5月),成長旺盛期(6月),成長停止期(9月)に調査した.5月までは新梢の位置に関係なく,個々の新梢長の差は小さかったが,6月には上部の新梢が長くなり,それからその差が顕著になった.新梢長と新梢の15N excess%との間には相関は認められなかったが,15N excess%は9月に顕著に減少した.新梢長と新梢の13C excess%との間には低い負の相関が認められ,5月から6月にかけて大きく減少した.新梢長と15N分配率(%)および13C分配率(%)の間には,5月から9月において有意な正の相関が認められた.これらのことから,上部の長く伸びる枝は,貯蔵された窒素あるいは炭素を相対的により多く利用していることが推察された.そして長い枝と短い枝では貯蔵養分と当年に吸収された養分の利用の度合いには差が無いが,特に,新梢成長には貯蔵された窒素の寄与が炭素に比べてより大きいことが推察された.
  • 飛川 光治
    2008 年 7 巻 3 号 p. 381-385
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    ナスの花粉の発芽に及ぼす置床後の培養温度の影響について寒天培地上で検討した.花粉の発芽および花粉管の伸長は,花粉の置床直後に発芽適温の25℃で1時間以上経過すれば,その後に15℃に遭遇しても,常時発芽適温で経過した場合と比べて同等であった.一方,置床後に一時的に15℃に遭遇した場合には,その後に25℃に1時間遭遇しても有意に劣ることが示された.ナスの慣行加温促成栽培における日中の25℃加温と受粉時間帯の果実生産への影響については,11:00~14:00の3時間の加温処理中に人為的に授粉することにより,種子数,正常果収量および果実外観は,加温処理外の時間に授粉した場合に比べて有意に向上した.また,それらは11:00~12:00の1時間の加温処理時に授粉することだけでも,加温処理をしない慣行栽培に比べて有意に向上した.
  • 前田 隆昭, 米本 仁巳, 樋口 浩和, 奥田 均, 萩原 進, 谷口 正幸, 北林 利樹
    2008 年 7 巻 3 号 p. 387-391
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    ブドウサンショウの秋季の早期落葉による不時発芽を抑制する技術を開発する目的で,ブドウサンショウと同じミカン科のウンシュウミカンで実用化されている植物成長調節剤エチクロゼートと,カンキツ類で用いられていたNAA,MHの3剤を用い,秋梢の発生抑制効果を検討した.栽培圃場で濃度を変えた植物成長調節剤3剤を散布し,9日後に全摘葉して枝を採取して枝挿し法を行うとともに,試験圃場でも発芽所要日数と発芽率を調査した.その結果,NAA200 ppm処理での発芽所要日数は約30日で,最も発芽抑制期間が長く,枝挿し法での発芽枝率は0%であった.また,試験圃場での発芽率も9%と有意に低かった.このことから,ブドウサンショウの秋梢発生抑制にはNAA200 ppm処理が有効なことがわかった.
  • 稲葉 善太郎, 加藤 智恵美, 村上 覚, 石井 ちか子
    2008 年 7 巻 3 号 p. 393-398
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    本試験は,暖地のキンギョソウの摘心栽培において長日処理と冬期夜温設定による効果を明らかにするために行った.キンギョソウ‘ライトピンクバタフライII(LPB II,II型)’と‘ライトピンクバタフライIII(LPB III,III型)’を供試し,夜温11℃と16℃のそれぞれに長日処理と自然日長を組み合わせた4処理区を設定した.9月下旬からの長日処理は‘LPB III’の草丈を伸長させた.長日処理と夜温16℃の組み合わせは,‘LPB II’および‘LPB III’の第1節以下分枝の到花日数を減少させるとともに採花本数を増加させることが認められた.栽培期間を通じて,‘LPB III’は‘LPB II’より切り花長が長かった.本試験の結果,‘LPB III’の摘心栽培においては,長日処理と夜温16℃の組合せが冬季の開花促進と採花本数の増加に有効であることが明らかとなった.
  • 吉田 祐子, 浜本 浩, 福永 亜矢子, 藤原 隆広, 熊倉 裕史
    2008 年 7 巻 3 号 p. 399-405
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,遮光除去後,ホウレンソウのアスコルビン酸含量が回復するために必要な期間とその機構について検討した.遮光除去後,晴天が続いた場合には2~3日目でホウレンソウのアスコルビン酸含量は無遮光と同程度に回復し,光強度変更後1~2日程度の早期に反応することが明らかになった.遮光除去後,植物体の水分含有率の減少とともに,生重および乾物重当たりでのアスコルビン酸含量の増加がみられた.さらに,人工気象室において光強度を弱光(160 μmol・m−2・s−1)から強光(390 μmol・m2・s−1)に変更して1日(24時間)経過後に,生重および乾物重当たりでのアスコルビン酸含量の増加が観察された.以上の結果により,遮光除去によるアスコルビン酸含量回復機構について,植物体の水分含有率の減少による濃縮効果と強光条件への変更に伴うアスコルビン酸合成の増加によるアスコルビン酸そのものの増加の両者によるものであることが示唆された.実際の栽培においては商品性を考慮して,遮光除去後2~3日目ではなくさらに日数を置いてから収穫することが望ましいと考えられた.
  • 山田 明日香, 谷川 孝弘, 巣山 拓郎, 松野 孝敏, 國武 利浩
    2008 年 7 巻 3 号 p. 407-412
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    トルコギキョウの冬春出し栽培における白熱灯を用いた効果的な長日処理方法について検討した.10品種を供試し,2004年10月8日にガラス温室に定植し,定植から開花まで4時間の暗期中断を行い,対照として無処理区(自然日長10-12時間)を設けた.10品種の暗期中断区における第1花の平均開花日は無処理と比較して22日から49日,平均で35日早くなった.‘ネイルピーチネオ’を供試し,5時間の暗期中断を定植から雌蕊形成期まで,雌蕊形成期から開花まで,発蕾から開花まで,花芽分化開始期から開花まで,定植から開花までの5つの発育ステージで行った.定植から発蕾までの期間は,無処理の66日に対し,暗期中断を定植から開花まで行った区では50日,定植から雌蕊形成期まで行った区では53日と大幅に短くなった.雌蕊形成期以降に暗期中断を開始した区では無処理との差が認められなかった.発蕾から開花までの期間は,暗期中断を定植から雌蕊形成期まで行った区で47日と短くなったが,そのほかの区では無処理の54日と有意な差が認められなかった.暗期中断による開花促進により,第1花までの主茎の節数が減少した.5時間の長日処理を暗期中断,日の出前電照,日没後電照の3つの時間帯で行った結果,定植から発蕾までの期間は,無処理の65日と比較して,暗期中断と日の出前電照でいずれも52日と最も短くなったが,日没後電照では58日と開花促進効果が劣った.以上の結果から,トルコギキョウの冬春出し栽培における開花促進には,白熱灯を用いた暗期中断または日の出前電照を定植直後から雌蕊形成期まで行うと効果が高いことが明らかになった.
  • 井上 勝広, 小川 恭弘, 尾崎 行生
    2008 年 7 巻 3 号 p. 413-418
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    アスパラガスの半促成長期どり栽培において,寄生するアザミウマ類の発生消長と近紫外線除去(UVA)フィルムの利用がアザミウマ類のハウス内密度に及ぼす影響について検討した.西南暖地のアスパラガスにおける優占的な寄生種はネギアザミウマであった.本種は,立茎開始後しばらくは親茎のやや上部に多く寄生していたが,立茎完了期(立茎開始後60日)から夏芽収穫期にかけて寄生の中心が親茎の下部に移った.また,本種はアスパラガス圃場において,より新鮮な擬葉を好んで寄生した.そして,本種の寄生密度は,茎葉の若い5月以降に急激に上昇して,5月中旬から下旬にかけて著しく高まったが,薬剤防除により生息密度は急速に低下し,その後も8月中旬まで防除により低密度で推移した.9月以降は防除なしでも密度は上昇しなかった.アスパラガス半促成長期どり栽培におけるUVAフィルムの利用は,本種に対する密度抑制効果が高く,減農薬栽培に役立つと考えられた.
  • 井上 勝広, 小川 恭弘, 尾崎 行生
    2008 年 7 巻 3 号 p. 419-423
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    アスパラガスの半促成長期どり栽培において,生育や収量に及ぼす近紫外線除去(UVA)フィルムの影響と近紫外線除去の持続性について検討した.UVAフィルムを展張したビニルハウスでは照度や温度,若茎の階級別収量,緑色度,糖度に差はみられなかった.しかし,UVAフィルムの展張によりアスパラガスの主枝の伸長が促進され,摘心した場合に一次側枝数は若干減少した.また,UVAフィルムを展張し続けた場合,近紫外線の除去率は年々低下することが認められた.
  • 倉藤 祐輝, 尾頃 敦郎, 藤井 雄一郎, 小野 俊朗, 久保田 尚浩, 森 茂郎
    2008 年 7 巻 3 号 p. 425-431
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    ブドウの早期成園化と高品質な果実の多収を目的に,灌水同時施肥による超密植栽培システムを開発した.本システムは,根域を制限せずに,10 a当たり800本以上の挿し木苗を超密植し,樹冠下に不透水性マルチシートを設置し,自動灌水制御装置と液肥混入器および点滴灌水チューブを用いて,生育ステージに応じて灌水と施肥を同時に行う方式である.定植2年目には成園並みの果実生産が可能であった.果実品質と収量に及ぼす新梢密度の影響を調査したところ,着果基準を15果房・m−1と設定した場合,新梢密度を10~20本・m1とすることで,果粒重,糖度および果皮色の優れた果実の多収生産が可能であることが明らかとなった.以上の結果から,本方式での3か年の果実品質と収量から,年間の灌水同時施肥基準を策定した.
  • 松本 辰也, 本永 尚彦, 知野 秀次, 児島 清秀
    2008 年 7 巻 3 号 p. 433-437
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    ニホンナシの主枝,亜主枝および側枝等の先端1年生枝部分の摘蕾作業軽減を目的として,新梢に対する摘心と摘葉による腋花芽着生の抑制効果を検討した.‘豊水’では,無処理区の腋花芽率が86~95%(3年間)であったが,満開50~65日後に新梢の先端1/3を摘心することにより腋花芽率は40~54%に抑制された.また,摘心の処理時期が早いほど,そして新梢の2次伸長部分が長いほど,抑制効果は大きかった.‘新興’,‘幸水’,および‘秋麗’においても,摘心は腋花芽着生を抑制した.摘心による腋花芽率の低下は2次伸長部分だけではなく,1次伸長部分においても認められた.新梢の基部から2/3の部分に対する摘葉は‘新興’において満開50~65日後の早い時期の処理で腋花芽着生を抑制した.これらのことから,骨格枝先端等の新梢における摘心と摘葉は,摘蕾と作業時期が競合しない開花数調節の技術として有効と考えられた.
  • 寺林 敏, 原田 直美, 伊達 修一, 藤目 幸擴
    2008 年 7 巻 3 号 p. 439-444
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    ニンジンを水耕し,通気および根域の水分条件が根の肥大に及ぼす影響を調査した.水耕培養液液面レベルをニンジン主根基部より7 cm下に保ち,1時間当たり0分(0分区),5分(5分区)および60分間(60分区)培養液に通気してニンジンを水耕した.培養液は園試処方1/2単位濃度液を使用した.その結果,処理区間で主根重に有意差は認められなかったが,60分区では主根肥大部分が長くなった(実験1).園試処方1/2単位濃度液を入れた栽培槽内に設置した底面が網目状の栽培ケース内に主根を水平方向に置き,主根が水没する(主根水中区),および主根が水没しない(主根気中区)ように培養液水深を調節してニンジンを水耕した.培養液は連続通気した.その結果,主根水中区に比べ主根気中区では,根基部から10~20 cmの部分の肥大がすぐれ,円筒形に近い形状となった.また,裂根の発生も少なかった(実験2).
発育制御
  • 大川 浩司, 菅原 眞治, 矢部 和則
    2008 年 7 巻 3 号 p. 445-449
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/25
    ジャーナル フリー
    単為結果性トマトの種子形成に関与する要因を明らかにするため,交配親の組み合わせおよび交配時期が単為結果性トマトの種子形成に及ぼす影響について検討した.また,開花の前後における子房の大きさの変化について,単為結果性トマトと非単為結果性トマトの品種比較を行った.種子親を非単為結果性品種の‘桃太郎ヨーク’とした場合,花粉親の種類にかかわらず有種子果率は100%で,1果当たりの種子数は200粒前後であった.種子親を単為結果性固定系統の‘PASK-1’および‘PF811K’とした場合,花粉親の種類にかかわらず,有種子果率は72~94%とやや低く,1果当たりの種子数は7.6~29.9粒であった.従って,単為結果性トマトの種子形成には,花粉親の種類は関係がなく,種子親の種類が大きく関与し,種子親が単為結果性の場合に種子は形成されにくくなると推察された.交配時期が単為結果性トマトの種子形成に及ぼす影響については,非単為結果性品種の‘桃太郎ヨーク’は,交配時期にかかわらず有種子果率はいずれも100%であり,1果当たりの種子数も標準的であった.一方,単為結果性品種の‘ルネッサンス’の有種子果率は,開花2日後では春季が8%,秋季が33%と,開花時での春季96%,秋季87%に比べて大きく低下し,1果当たりの種子数も開花2日後では春季が0.8粒,秋季が4.0粒と極端に少なかった.また,蕾時から開花2日後にかけて‘ルネッサンス’の子房は,横径および縦径とも順次増加した.従って,‘ルネッサンス’の開花2日後における種子形成能力の低下は,雌ずいの受精能力低下ではなく,開花前からの単為結果性の発現による影響と推察された.
feedback
Top