日本ヘルスサポート学会年報
Online ISSN : 2188-2924
ISSN-L : 2188-2924
教師付き機械学習を用いた過量服薬による自殺企図患者の再入院予測モデルの試作
松田 晋哉
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 9 巻 p. 35-43

詳細
抄録

[目的]自殺は回避できる死であり、その予防対策を社会的に実装する必要がある。自殺には予兆があり、その一つが受診行動の変化である。そこで、本研究ではレセプトデータに教師付き機械学習を適用することで、過量服薬による自殺企図患者の再入院を予測するモデルの試作を行った結果について報告する。

[資料及び方法]試作に用いた資料は、東日本の1自治体の2014年4月から2021年3月までの、国民健康保険、後期高齢者医療制度、生活保護のレセプトである。このデータから2015年4月から2016年3月までの間に神経症の診断があり、かつ過量服薬による入院がある患者を抽出した。これらの対象者について、初回入院時の精神疾患の診断の有無、経過観察期間中の月及びその特性(誕生月、休暇後)、初回入院時の年齢階級、精神科医薬品の処方量の変化をレセプトから把握し、過量服薬による再入院の有無を予測するモデルのCHAID(CHi-squared Automatic Interaction Detector)とランダムフォレストによって作成した。

[結果]CHAIDにおける最初の分岐は休暇後の月であった。休暇後の月の群の場合、過量服薬による入院に区分されるの割合は71.695%とルートにおける59.387%から大きく増加していた。休暇後の月である分岐の次の層は年齢階級で分岐され、19-39歳で入院に区分される割合は78.229%に増加した。最初の分岐が休暇後の月でない群については、誕生月が当該月を含んで前後1か月以内の群で入院に区分される割合が69.379%と増加し、さらに入院有の割合は次の階層で年齢階級が6-18歳で86.842%、40-64歳で74.398%に増大していた。

[考察]本分析の結果、レセプトデータに機械学習を適用することで、過量服薬による入院患者が、再度過量服薬で入院するリスクを予測するモデルが作成できる可能性が示された。ただし、レセプト情報は作成から把握まで2か月のタイムラグがあるため即時性のあるモニタリングには不適切である。したがって、現在、国が構築中のオンライン資格確認システムと連動して動く電子処方箋や電子カルテ上の情報を活用することが、より合理的である。また、自殺企図歴という極めてプライバシーレベルが高い情報を関係者間でどのように共有することが可能なのかという、法的および倫理的議論が必要である。

著者関連情報
© 2024 日本ヘルスサポート学会
前の記事
feedback
Top