抄録
虐待を受けた児童の増加に伴い、職員による施設入所児への虐待もまた増加している。これまでの研究では、施設内虐待が生じた後、事後的に原因やリスクファクターに基づいて対策が論じられており、施設内虐待がなぜ「生じていないのか」という保護因についての把握はなされていない。そのため、本研究では半構造化面接による施設職員15名のインタビュー調査を行い、施設内虐待をめぐる養育のプロセスを包括的に明らかにすることを試みた。M-GTA による分析の結果、6 個のカテゴリー、14個のサブカテゴリー、50個の概念を得た。この結果から、施設内虐待をめぐる養育プロセスとは、環境と個人的特性が相互に影響し、またそれぞれの要素が変化しうる動的平衡プロセスであることが仮定された。また、適切な養育は「不安定なつり合い」と言える性質であり、施設内虐待へと陥ることを留め続けることで成立するものであることを明らかにした。