抄録
目的 : 思春期に視覚障害者となったA氏がエンパワメントしていく軌跡を明かにすることである.方法 : 半構造化面接を行い、ライフヒストリー法を用いてデータ収集及び分析を行った.解釈の前提として、Simonのパワーの概念を根底に、Rappaportのエンパワメント理論を用いた。結果 : A氏にとってエンパワメントしていく過程は、6つの時期で構成されていた。その過程には〈自分が障害者になったことに気づく〉、〈自分のなかの偏見〉のディスエンパワメントの状態から〈自分に自信をもつ〉、〈障害者である自分と向き合う〉、〈ありのままの自分を受け入れる〉がありエンパワメントした状態となり、その後、人として挑戦し続ける〈更なる飛躍〉という軌跡があった。結論 : A氏にとってのエンパワメントしていくことの中心的テーマは《新しいことへの挑戦》であった。