抄録
医療用医薬品開発には、国民が安全に使用することを確認する臨床試験が必要である。しかし、我が国では臨床試験の症例を集めることに多大な時間と労力が必要となっている。臨床試験が円滑に行われると、新たな治療薬を待つ患者やその家族への期待に応えられると同時に、臨床開発費を低減できるなど製薬企業への経済効果も大きい。本論文では、医薬品開発品目によって症例集積性が異なる点に着目し、治験症例の集積性が悪いのは患者・医師・治験実施者などのコミュニケーションギャップが原因であるという仮説を設定し、4件の治験事例の検証から症例の集積性を高める方策を検討した。その結果、治験開始から厚生労働省承認申請までのプロセスを一つのプログラムと捉え、プログラムのステークホルダーに被験者(患者)を参加させることで集積性が高まるのではないかという示唆が得られたことを述べる。また、医薬品の特性ごとにステークホルダーに対して異なる対応が必要であることを述べる。