抄録
2017年12月に世界農業遺産(FAO)に認定された宮城県の大崎地域は、江戸時代から地形に合せた様々な水利システムを構築して新田開発を行い、一大稲作産地を形成してきた。近年は20数年にわたり、「自然共生型農業」を導入。市内に2つのラムサール条約湿地が登録されるなど、自然共生型農業が行政によって推進されてきた。その後、2011年に起きた東日本大震災からの復興計画の一環として、市内全域で自然共生型農業を拡大し、地域のブランド力を上げていく意図から「世界農業遺産」(FAO)の認定を目指した。本稿では同地域における「自然共生型農業」の浸透プロセスを整理するとともに、その成果を農家を対象とした調査によって把握する。また、世界農業遺産の申請および認定後のアクションプランの実践についてP2Mフレームワークを適用して分析し、「大崎GIAHSプログラム」を推進するプラットフォームの課題と改善策を示すとともに、「自然共生価値創出マネジメントモデル」によるコミュニティマネジメントを農村振興手法の一つとして提案する。