抄録
産学連携は、産業社会におけるイノベーションを起こすための重要な戦略として認識されている。また、産学連携は大学と企業という機能別組織が有期性をもったプロジェクトを編成し、これまでとは違う目的や価値観で取り組むプロジェクトとみることができる。そのため、P2Mなどのプロジェクト・マネジメント知識体系が提案するステークホルダー・マネジメントを実施し、その人々全てに自己変革が迫られることとなる。しかし、産学連携には組織や個人などのステークホルダーに変革を試みるようなプロジェクト・マネジメントが必要であることが、強く認識されてこなかった。産学連携において大学人にも、企業人にも、互いの利益の相反が存在する。そのため、産学連携のステークホルダーは、ジレンマにおちいることとなる。産学連携というものの本質を大学と企業という異質な組織と組織人には、大きな違いがあるということを明らかにすることが本研究の目的である。その上で、目的や価値観の違う組織の連携をどのようにすすめていくべきか。価値観の違いから発生するジレンマをどのように解消するか。その解消のためのプロジェクト・マネジメントについて検討する。