抄録
物理空間と仮想空間の両者を活用した豊かな社会の構想、Society 5.0を実現するためには、個人のプライバシーを侵害しない条件で、社会動向を適確に示すデータの活用が不可欠であ る。本稿では安心して生活ができる社会システムを構築するため、個人のプライバシー情報と行動情報の扱いについて考察する。まず、P2Mの理論的枠組みを、社会システム構築プログラムに適用する場合、楽観的シナリオとともに悲観的シナリオを示し、楽観的なシナリオに基づいて工学的な実験を進めると同時に、悲観的シナリオに陥らないような対策をとり、情報の利用ルールをつくっておくことが必要であることを提案する。事例として、20 年後にIoTとAIを利用し豊かな社会が実現する楽観的シナリオと、情報の独占管理によって個人の安心と安全確保が脅かされる悲観的シナリオを提示する。悲観的シナリオを回避し、かつ、産業の発展に貢献できるような、個人の行動情報の階層化モデルを示し、プライバシー情報を確保するためには、ブロックチェーンのような分散台帳システムの導入が有効であることを述べる。