抄録
11世紀の建造物とされているプレアビヒア寺院をめぐっては1962年の国際司法裁判所で寺院の帰属はカンボジア領と規定されたが、カンボジアとタイ両国で国境未確定地域を含む領土問題となってきた。カンボジア内戦終了後の2000年代になり、この問題はカンボジアとタイの両国の政治指導者、国内の市民、反市民社会アクターを越えた脱国家的リンケージの展望を示してきた。本研究では国際関係論のセキュリタイゼーションを援用し、両国の社会的安全保障の観点からプレアビヒア寺院をめぐるアイデンティティー政治言説の構築を分析する。